第23章 彩る夜空を夢見て〈煉獄杏寿郎〉
「ありがとうございます…っ!とっても嬉しいです!」
「うむ!」
二人は朝餉を終えると、杏寿郎は報告書の作成に取り掛かり、かれんは家事を済ませた。
午後になり、杏寿郎が仮眠をとっている間にかれんは買い出しに家を出ると、近所にある甘味処に立ち寄っていた。
「おや奥さん、いらっしゃい!今日も芋羊羹かい?」
気さくな店の亭主は、いつもの笑顔でかれんに声を掛けてくれた。
「こんにちは!はい!主人がこちらの芋羊羹が絶品だと話していて…!今日もお一つ、いただいてもよろしいですか?」
「それは嬉しいねぇ。じゃあ今用意するからね、ちょっと待ってておくれ」
「はい!ありがとうございます」
亭主が店奥で、芋羊羹を薄い紙にくるりと包んでくれている間、かれんは手提げから小銭の用意をしていると、
「かれん!」
「! きょ、杏寿郎さん…っ!?」
振り向くと、そこにいたのは着流しを身に纏った杏寿郎だった。
かれんは驚きのあまり、その場に固まってしまった。
「すまない!かなり眠ってしまっていた!」
「いえ!そんな!で、でも、どうしてこちらに…っ!?」
「かれんがいないので要に行き先を尋ねたところ、買い出しに出かけたと聞いて…。迎えに来てしまった」
荷物を持とう!と杏寿郎は嬉しそうにかれんの手から、食材の入った買い物籠を持ってくれた。
「お疲れのところ…わざわざこちらまで申し訳ありません…っ」
「なに、かれんは何も気にするな。…かれんにはいつも家のことを任せっきりにしてしまっているからな…。少しでもかれんの役に立てればと思ってな」
申し訳なさそうに眉を下げる杏寿郎は、かれんを見るとやさしく目を細めた。その眼差しを、かれんは心から好きだと思った。
側から見たらごく普通のことなのかもしれないが、こうやって同じ時間を共に過ごせる喜びは、二人にとっては何にも変えることのできない、至福のひとときなのだ。
「へい、奥さん!芋羊羹ね!…ってあれ、もしかしてご主人かい?」
「あっ、はい!」
亭主は物珍しそうに杏寿郎の髪色を眺めると、随分とまあ良い男じゃないか!と、かれんに芋羊羹を手渡した。