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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第3章 思い出すのは〈時透無一郎〉




「檜原さん!コレ出来ました!どうですかね…?」
「この会議、再来週にリスケになりました!」
「…予算これじゃ厳しいって返ってきちゃって…」

かれんのデスク周りには、いつも慌ただしく人が出入りしている。昨年からクリエイティブ事業の部長に昇格したかれんの周りでは、毎日ひっきりなしに様々な案件の進捗が行き交う。


「え〜…これオッケーもらえなかったかあ…」

かれんは、うーんと眉を顰めた。

「そうなんです〜…。もう一回プッシュかけますか?」

「うん…じゃないと予算的に間に合わなくなっちゃうのよね…。蜜璃ちゃん悪い。もう一回これで依頼かけてもらってもいい?どうしてもダメそうなら、…うん、なんとかする」

「分かりましたっ。私もちょっと強めにお願いしてみます!」

「いつもありがとね、蜜璃ちゃん」

眩しい笑顔がチャームポイントな後輩の甘露寺蜜璃。かれんのことをいつも手厚くサポートしてくれて頼りになる心強い存在である。彼女とは新規事業の立ち上げなど、今まで数え切れない程の仕事を共にこなしてきた一番信頼の置ける後輩でもあった。

そして今日から新たにクリエティブ事業に配属されたのが、入社二年目の時透無一郎。同じ社内にいたのにも関わらず、かれんは今まで殆ど無一郎と会話をしたことがなかった。


かれんが会議から戻り再度資料に目を通していると、無一郎がデスクの横にやってきた。

「…檜原さん、お疲れ様です。先日もご挨拶させていただきました広報から参りました時透無一郎です。今日からよろしくお願いします」

「ああ、時透くん!よろしくね!デスクは甘露寺さんの隣よね?彼女はベテランだから、何でも分かるはず。もちろん私にも何かあったら声かけてね」

「はい、分かりました。色々とありがとうございます」

無一郎はぺこりと頭を下げるとデスクに戻り、パソコンに向かって作業をし始めた。

(なんか無表情だけど…可愛いかも)

かれんより一回りも年下だが、落ち着いた雰囲気がそれを感じさせなかった。でもよく見るとまだ何処かあどけなさが残るような愛らしさがある。無一郎は美大を卒業しており、グラフィック関係を専門にしていた。それもあり、今回の人事異動でこのクリエティブ事業へと配属になったのだった。

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