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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉




気付けば、桃寿郎の頬に伝う、一筋の涙。
しかしそれは悲しみの涙ではなかった。陽の光が差し込んでくるようで、桃寿郎の胸元はふんわりとあたたかかった。


「桃ちゃん…!?どうしたの?!どこか痛いの??」


星灯の声に、桃寿郎ははっと我に返った。
男女の姿は跡形もなく、いつも通りの自宅の玄関が目の前に広がっていた。

「す、すまない!何でもない!大丈夫だ!」

「…本当に…?」

「ああ!…星灯に会えて、ほっとしてしまったみたいだ!」

「もうっ、びっくりした…っ!桃ちゃんったら急に泣くんだもの!」

すまなかった!と申し訳なさそうに笑う桃寿郎。

星灯も密かに、こんなふうに桃寿郎と同じ家に帰ることがいつかできたならと、ふと夢見てしまうのだった。


「星灯ー??桃ちゃん帰ったの??」

「あ!うん!」

キッチンから顔を出したのは、星灯の母だった。

「もうすぐお夕飯できるからね。悪いけど星灯、お料理運ぶの手伝ってくれる?あ!桃ちゃん!お帰りなさい!その荷物から見えるのはトロフィーよね!?後で詳しく聞かせてね!」

手際良く用件を話し、キッチンに戻る星灯の母。

「! 桃ちゃん、ずっと立ちっぱなしのまま話しててごめんね…っ」

「いや!俺も突然泣き出してしまってすまなかった!着替えたら、俺も手伝いに行く!」

「うん!ありがとう!待ってるね!」

星灯はキッチンに向かい、桃寿郎は着替えをしに自室へと向かった。

・・・


それからというもの、星灯は着物を着た女性と白いマントを羽織った男性の夢を見なくなった。その男女は一体何者だったのかと時々思い出すものの、それを知る術はなかった。


桜が満開を迎えた、とある日の早朝。
桃寿郎は星灯の自宅前に来ていた。


「桃ちゃん!おはよう!ごめん、待たせちゃった…?!」

「星灯!おはよう!いや!丁度今着いたところだ!」

「よかった…!お天気良くて、絶好のお花見日和だね!」

「ああ!朝のニュースで言っていたのだが、今日はどこも桜が見頃を迎えるそうだ!」

「ね!私も見た!お花見も神社巡りも楽しみね!」

「うむ!星灯の手作り弁当も今から楽しみだ!」

「ふふっ、桃ちゃんの大好きなさつまいもの甘煮も作ってきたからね!」

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