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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉




「本当か!!では着いたらすぐに昼にしよう!!」

「え!?で、でも今さっき朝ごはんを食べたばかりでしょう…?!」

「勿論、花見もいいが、星灯の弁当も早く食べたくてな!星灯の料理は世界一だ!」

「〜〜〜…っ!!!」

さ!行こう!と桃寿郎は星灯の手を取ると、駅まで駆け出した。


桜舞う歩道に、二人の背中が小さくなっていった。


・・・






























「杏寿郎さん、温かいお茶はいかがですか?」

「うむ!ありがとう!」



縁側に座る、詰襟のような服を着た男性は読んでいた本をぱたんと閉じた。

杏色の着物を着た女性がその横にそっと腰掛け、湯呑みを男性に手渡した。


「今年も綺麗に咲いていますね」

「ああ、本当に。いつまででも、見ていられるな」


春の麗らかな風に庭の桜の木が揺れ、桃色の花弁たちがふわりと水色の空に舞い上がった。


「…これからも、」


そう男性は言いかけると、その口を閉じた。
その緋色の瞳に、淡い桃色が揺れていた。

「…杏寿郎さん?」

女性は、男性の横顔を見つめ、ただその続きを待った。




「…これからも、この先も、灯里(あかり)と───…」

























「杏寿郎様ッ!!!」

「「 !! 」」


そこに、一羽の鴉がやってきた。少々慌てているようで、肩で息をしていた。

「オ話シ中、大変申シ訳アリマセン…!!急遽、本部ニ来ルヨウ、オ館様ヨリ伝達ガアリ…!!」

「うむ!承知した!…灯里、すまないが行ってくる。何かあれば要より伝える」

「大丈夫ですよ。どうかお気をつけて。御武運を」

その男性は微笑み、女性の手をぎゅっと握る。
見送りはここで良いと話すと、羽織を身に纏いその場を後にした。





縁側に残された女性は、再び庭の桜を見上げた。

春のやわらかい日差しが淡い花弁にゆらりと透き通り、女性は眩しそうに目を細める。





「────…これからもずっと、一緒にいられますように」





女性は祈るように、そっと目を閉じた。










  𓂃◌𓈒𓐍

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