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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉




「星灯…、その、星灯は…?」

恐る恐る訊く桃寿郎に、星灯はにっこりと笑みを返した。

「うん、お陰様で、無事に最優秀賞をいただくことができました…!」

「!! そうか…!星灯!!凄いな!!俺も嬉しい!!」

桃寿郎は、星灯の両手を更にぎゅっと握り締めた。

「桃ちゃん、ありがとう。…本番ね、すっごく緊張して…、でもね、桃ちゃんも今、一緒に頑張ってるんだって思ったら、すごく勇気が湧いてきて…!今までにないくらいに、楽しく演奏することができたの。まるで…桃ちゃんが隣にいてくれているみたいだった…!」

柔らかく微笑む星灯に、桃寿郎の瞳が揺れた。
泣きたくなるほどに、星灯を愛おしいと想う気持ちが溢れ出す。

「星灯…、沢山頑張ったな」

「ありがとう。でもそれは桃ちゃんも同じでしょ?そうだ!春休みになったら、たっくさんお出かけしようね!」

「ああ、勿論だ。沢山、沢山出かけよう!」

にっこり笑う星灯に、桃寿郎の溢れる想いが鼓動を速めた。
それはずっと言いたかった、星灯への言葉。遥か遠くの昔から決まっていたような、そう言いたいと胸に秘めていた言葉。自分の心の奥底に隠れていた、約束のような、言葉。

この場所に、星灯の居る場所に、ずっと還って来たかったと、魂の聲が桃寿郎の胸に響き渡った。



「星灯。ただ今、帰りました」


「…! 桃ちゃん、おかえりなさい…っ!」



微笑み合う星灯と桃寿郎。

すると、桃寿郎の視界に突如舞う、桜の花弁。

瞬きをすると、星灯の隣には、以前教室で見た杏色の着物を着た、髪を片側で束ねた女性が立っていた。


初めて見ることができたその女性の顔は、星灯にそっくりだった。


女性は、桃寿郎の隣を見つめ、静かに微笑んでいた。


桃寿郎はふと、自分の隣を見上げた。
そこにいたのは自分とよく似た男性が立っていた。背が高く逞しい体つき。髪は少々長く、きりっとした顔立ち。詰襟のような装いに、その上から羽織る白いマントの裾には炎のような模様がたなびく。その男性も目を細め、着物の女性に微笑んでいた。




 『 灯里(あかり)。今戻った。 』

 『 杏寿郎さん。お帰りなさい。
   ご無事で何よりです。 』




男女の声は、はっきりと桃寿郎に聞こえた。
二人は和かに微笑み合うと、桃寿郎の視界からすうっと姿を消した。

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