第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉
・・・
剣道の大会は表彰式を終え、無事に幕を閉じた。
腕に抱えた優勝トロフィーがずしりと重い。この勝利は、自分を支えてくれた沢山の人達の応援と、自分と戦ってくれた相手がいてくれたからこそ得たものだと、桃寿郎は目を閉じ、黄金色に輝くトロフィーをぎゅっと抱きかかえた。
ピロン♪
帰り支度をしている手を止め、桃寿郎はスマホを手に取った。
『桃ちゃん。大会おつかれさま!気をつけて帰ってきてね^^』
その文面に、桃寿郎の胸が熱くなる。
会いたい
星灯に 会いたい
ただ今は、星灯に会いたい。会って、星灯の笑顔が見たい。たくさん、たくさん頑張った星灯を、この腕で抱きしめたい。
桃寿郎はその一心だった。
桃寿郎は急いで荷物をまとめると、顧問教師とメンバーに挨拶を済ませ、家路に駆け足で向かった。
・・・
「ただ今戻りました!!」
桃寿郎は息を切らしながら、玄関の扉を勢いよく開けた。
何やらキッチンの方から笑い声が聞こえてくる。
(誰か来ているのか…?)
ふと足元を見ると、そこにあったのは星灯のローファーがあった。
星灯…!!
桃寿郎は急いで荷物を肩から下ろそうとした時。
「桃ちゃんっ!お帰りなさい!」
顔を上げると、星灯が笑顔で玄関へと向かってきた。
「星灯…!どうしてここに…!?」
「あのね、お母さんと桃ちゃんのお母さんが夕飯を作ってくれていて!帰り道にお母さんから連絡が来て、そのまま桃ちゃんのお家に来ちゃったの」
「そうだったのか!まさか星灯がいるとは思わなかった!」
「ふふっ、びっくりさせちゃったね!」
嬉しそうに桃寿郎の荷物を持つ星灯。桃寿郎は星灯のコンテストの結果が気になって仕方がなかったが、どう切り出していいか分からなかった。
「…!! 桃ちゃん!これってもしかして大会のトロフィー!?」
桃寿郎の荷物からトロフィーがちらりと顔を出した。
「あ、ああ!すまない…、連絡をしようと思ったのだが、星灯からの連絡を見て、そのままにしてしまっていた…」
「ううん、大丈夫よ!…良かった!本当に良かったねっ!桃ちゃん!優勝おめでとう!!」
にっこり笑う星灯の目尻にうっすらと涙が光る。桃寿郎は星灯の手をそっと握った。