第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉
「そんなことはない!星灯は強い!…いつも星灯の想いに俺は救われてばかりで…っ。自分のことのように喜んでくれたり、涙を流してくれる星灯は、…その、本当に…っ、俺は嬉しいんだ…っ!」
顔を赤らめて必死に話す桃寿郎。星灯はその想いに綻んだ。
桃寿郎は、本当に嬉しかったのだ。自分のことを、いつも一生懸命に想ってくれていることが。
星灯という存在が、桃寿郎の倖せそのものだった。
「桃ちゃん、ありがとう。…私、桃ちゃんの一番でありたいなって思うのに、…肝心な時に傍にいれないのって、恋人として悔しいなって…思っちゃって。でも、一緒にいるだけが、全てじゃないよね。離れてても、桃ちゃんと同じ気持ちなんだって思ったら、…すごく幸せなことなんだって思ったよ」
「俺も、星灯を想えることを何よりも嬉しく思う。大好きな人がいるというのは…幸せなことだな」
うんと、星灯が頬を染めて頷く。
出会ってから何年もの月日が経っているが、変わることのない星灯への想い。それは星灯も同じだった。今という、同じ時間(とき)を過ごせる奇跡に、二人は歓びを噛み締めた。
「私、桃ちゃんが…大好き」
「俺も、星灯が大好きだ!」
桃寿郎の声が、店内に一段と大きく響いた。
「あらっ!!昔っから二人は仲良しさんって思ってたけど、もうそんな仲だったのね!!いいわねぇ〜青春って感じ!ちょっと詳しく聞かせてちょうだい??」
「〜〜〜っ!?!え、えと!!おばさん!今日はもう遅いので帰りますっ!!ね!そうだよねっ!?桃ちゃん!!」
「そ、そうだな!!今日は失礼します!!ご馳走様でした!!」
桃寿郎は二人分の代金を奥さんに手渡し、頭を下げると駆け足で精肉店を後にした。
「ふふっ、二人して照れちゃうのも、全然変わらないわねぇ」
精肉店の亭主と奥さんは、二人の後ろ姿に目を細めた。
・・・
「じゃあ、また明日ね!」
「ああ、また明日!」
すると星灯は繋がれた桃寿郎の手を見つめ、目を閉じた。
「? 星灯?」
「…“本番の日も、”」
「…?」
星灯はさらにぎゅっと、桃寿郎の手を握りしめた。
「“本番の日も、桃ちゃんがいつも通りに試合に臨めますように───”…」
「…!!」