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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉




「はい!お待ちどうさま!熱いから気をつけてね?」

熱々のコロッケを受け取り、いただきます!と星灯と桃寿郎の声が重なる。立ち込める湯気ごと、二人は頬張った。


「うまいっ!!」「うん!美味しいっ!」


コロッケはここに限るな!と桃寿郎はぱくぱくと食べ進めていく。恋人が美味しそうに食べる姿に、星灯の頬が緩んだ。すると桃寿郎がその視線に気付く。

「? 星灯、どうした?」

「あ、ううん!やっぱりここのコロッケが一番美味しいね!」

「ああ!毎日でも食べたいくらいだな!」

あっという間に完食してしまった桃寿郎。ちらりと星灯のコロッケに目をやると全く減っていなかった。

「…星灯?食欲がないのか?」

「う、ううん!熱くて冷ましてただけ!」

「? …そうか」

星灯は慌ててふうふうと冷ましてはいるものの、どこか心ここに在らずだった。

「星灯、…何かあったのか?」

その問いに、星灯の動きがぴたりと止まる。桃寿郎が星灯の顔を覗き目が合うと、その瞳から大粒の涙が溢れてきた。


「星灯…?!どうした、何があったんだ?!」

「ご、ごめ…っ、…あ、あのね────…」


先程の練習中、星灯の出るソロコンテストの参加人数の変動があったと顧問の教師から知らされた。急遽、日程調整が行われ、星灯のコンテストの日と、桃寿郎の剣道の大会がものの見事に被ってしまったのだ。星灯はそれに酷く落ち込んでいた。

「ごめんね…、桃ちゃんの大会に行けなくなっちゃって…」

「星灯が謝ることはない!…当日会えないのは寂しいが、其々の場所で一緒に頑張ろう!星灯、きっと大丈夫だ!」

桃寿郎がにっこり笑い、コロッケを持つ星灯の手にそっと手を添えた。花咲くように、星灯に少しずつ笑顔が戻る。

「うん…!私もソロコンの当日、桃ちゃんも今、一緒に頑張っているんだなって、…離れてても桃ちゃんのこと、一番に応援してるね!」

「ありがとう!俺も星灯がベストを尽くせるよう祈っている!」

「桃ちゃん、ありがとう…っ!」

星灯の笑顔に桃寿郎にも笑みが溢れた。

「桃ちゃんの大会に行けなくなっちゃったって、すごく落ち込んじゃって…、でも桃ちゃんの言葉ですごく元気になれたよ。いつもありがとう。…私、すぐにめそめそしちゃうからなぁ…っ」

苦笑いする星灯に、桃寿郎は添えていた手をぎゅっと握った。

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