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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉




大好きな人の笑顔は、こんなにも気持ちを強くさせてくれる。
お互いが抱えていた大会への不安が、嘘のように消えていくようだった。


「星灯、今日も練習があるのだろう?」

「うん!音楽の先生に見てもらうことになってて。桃ちゃんも部活だよね!」

「ああ!また校門で待ち合わせて一緒に帰ろう!」

「うん!」


するとちょうど予鈴が鳴り、またあとでねと、2人は席に着く。
ガラッと扉が開き、教師が黒板の前に立った。

「おーし、授業始めるぞ〜。あと今日は、抜き打ちテストもやるからな〜!」

「「「えええええっ!?」」」

その教師の言葉に、生徒達は一斉に喚き散らした。


星灯は頬杖をつきながら、窓の向こうで風に揺れる木々をぼうっと眺めた。先程、目の前に現れた声とマントのことが気になり、頭から離れなくなっていた。


 あの人影は 一体誰なんだろう…


ふうと溜息をつく星灯を、桃寿郎は心配そうに見つめていた。

・・・


その日の放課後。


桃寿郎は打ち込みを終えると、水を飲みに体育館の外に出た。


 まだまだ隙だらけだな…
 これでは相手にすぐ突かれてしまう


大会のことを考えると、緊張のせいか体が強張ってしまう。思うように竹刀が振れず、桃寿郎は悔しさで下唇を噛む。大きく深呼吸をし、気持ちを切り替えようとするが、焦ってはいけないと思えば思うほど、手元が余計に力んでしまった。


 集中しろ!自分に負けるな!


桃寿郎はそう自分に言い聞かせた。










…──♬─♩── ──♪──♬───…





すると何処からか、透き通る音色が聴こえてきた。


 …!!

 この音は…っ!!!


桃寿郎はその音が聴こえる方へと、気付けば一目散に駆けていた。



…─♬─♪──♫───…



音がだんだんと鮮明になり、歩き進めて行くと廊下の一番の奥にある教室に辿り着いた。

その教室の窓から中をそうっと覗くと、そこには星灯の後ろ姿があった。


 やはり…!


星灯は譜面をじっと眺め、何やら鉛筆で書き込みをしている。譜面台に鉛筆を置くと、星灯はフルートを構え、すっと息を吸い旋律を奏でた。

星灯の美しいフルートの音色が、桃寿郎の総身へと響き渡る。

三拍子のワルツの曲は、跳ねるような軽快なテンポで、可愛らしい曲調が星灯を思わせた。

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