第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉
もう二度と星灯をこのような気持ちにさせまいと、桃寿郎は俯く星灯の手をぎゅっと握った。
「…星灯。いつも俺のことを気にかけてくれてありがとう。これからは気を付ける。本当に…すまなかった。…星灯?どうか顔を上げてくれないか?」
星灯は溢れそうになる涙を堪えながら、桃寿郎を見上げた。
「…桃ちゃん、約束よ?」
「ああ。絶対だ。約束する」
桃寿郎のその言葉に、星灯がそっと微笑んだ。
星灯の笑顔は世界一だと、桃寿郎は思う。
ふと星灯は、桃寿郎に握られた手元に視線を落とした。
「……あれ…?」
「? 星灯?」
このやりとり
前もどこかで したことあるような…
すると突然、夢で見た炎のマントが星灯の視界にひらりと舞った。
『灯里(あかり)。約束だ。俺はずっと───…』
「…アカリ…?……あなたは一体…何者なの…?」
気が付くと、声と炎のマントは星灯の前から消えていた。そして再び感じる、懐かしくも切ない気持ち。
「星灯…?どうした?大丈夫か!?」
桃寿郎の声に、星灯ははっと我に返った。
「…っご、ごめんね!うん!大丈夫よ!!」
「…そうか?何処と無く、元気がないように見えるが…」
「そ、そう?最近、休みの日もソロコンの練習してて、あまりゆっくりできてないからかなっ!」
桃寿郎に心配を掛けないよう、星灯は必死に笑顔をつくってみせた。桃寿郎はまだ心配そうに、星灯の顔を覗いた。
「星灯も…無理だけはしないで欲しい」
「うん。いつもありがとう、桃ちゃん」
にこっと笑う星灯に桃寿郎はほっと胸を撫で下ろした。
「少し先になってしまうが、お互いの大会が落ち着いたら、どこか出かけよう!その時、一年の記念も一緒に祝いたいと思っているのだが、どうだろう!」
「! うん…!桃ちゃんと最近お出かけできてなかったもんね。嬉しい!ありがとう!とっても楽しみ…っ!私、ソロコン頑張るね!!」
「星灯ならきっと優勝できる!!大丈夫だ!!」
「ふふっ、桃ちゃんありがとう。桃ちゃんにそう言ってもらえるとすごく勇気が出てくるな。桃ちゃんもきっと優勝できるよ!大丈夫!!」