第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉
燈子と楽しそうに話す星灯を、桃寿郎もそっと見つめていた。
照れると林檎のように赤く染まる星灯の頬。桃寿郎の目尻がふわりと下がった。
「…桃寿郎、ホント星灯ちゃんのこと好きよな」
「…! ま、まぁな!!」
「あれ、付き合ってどんくらいだっけか?」
「今月でちょうど一年になる!」
「おー!めでたいねぇ!なんかお祝いすんの?」
「…是非そうしたいのだが、今月は星灯のフルートのソロコンテストがあってな。…俺も大会があるので、どうしようかと悩んでいた」
「あー、星灯ちゃん吹奏楽だっけ?部活。文化祭で星灯ちゃんのソロ聴いたけど、めちゃくちゃ上手くて俺ビビったもん」
「ああ!そうなんだ!星灯の音色は世界一だ!!」
「ハイハイ〜ご馳走様ですっ。恋に部活に…桃寿郎サン、大忙しってワケね」
「うむ!これぞ正に“リア充”!というものだな!」
「ははっウケる!桃寿郎、ソレ言いたかっただけじゃんっ!」
「む!バレたか!」
きゃらきゃらと天悠と楽しそうに話す桃寿郎。
桃ちゃんって…
ほんと おひさまみたい
きらきらと輝く桃寿郎の笑顔。それは光がぽっと灯るように、周りを明るく照らしていた。
桃ちゃんの笑顔に
私はめっぽう弱いなぁ…
星灯は桃寿郎の笑顔が大好きだと、改めて思った。
・・・
「桃ちゃんっ」
「! 星灯!おはよう!」
1限が始まる前の休み時間、星灯は授業の支度をする桃寿郎に声を掛けた。
「…また無茶なこと、したんでしょう」
「! きょ、今日はちゃんと、歩道を走ってきたぞ!」
そんなの当たり前よ!とツッコミたい気持ちもあったが、星灯はそのままのトーンで話し続けた。
「…稽古も大切だけど、焦って登校して、もし事故にでもあったらどうするの?」
真剣な星灯の瞳に、桃寿郎は何も言えなくなってしまった。いつも自分のことのように想い考えてくれる星灯。その想いに桃寿郎の胸がぎゅっと締めつけられた。
「…。…俺は星灯に…心配ばかり掛けているな。情けない…」
桃寿郎は申し訳なさで、星灯から目を逸らしてしまった。
「…桃ちゃんに何かあったら…、私…いやだもの」
その言葉に桃寿郎ははっと星灯を見ると、その瞳が微かに潤んでいた。大切な恋人を不安にさせ、泣かせてしまったことを桃寿郎は激しく悔やんだ。