第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉
「よっと!」「それっ!」
二人は宙返りをして、その門を難なく華麗に超えていった。
「?! き、君達!!コラ!!待ちなさい!!」
教師の村田は二人を呼び止めるも、あまりの速さに追いつけなかった。
「ねぇ桃寿郎くん〜、これまた怒られるやつじゃない??」
「かもな!!」
二人はそのまま、教室へと駆け込んでいった。
・・・
ガラッ!!!
勢いよく教室の扉が開き、桃寿郎と炭彦が駆け足で滑り込むと、ちょうど朝礼開始のチャイムが鳴り響いた。
間に合って良かった〜と炭彦は息一つ上げず、何事もなかったように席に着く。桃寿郎も変わらず溌剌としている。
「おす!今日は一段と派手にギリギリだったな!」
桃寿郎の前の席に座る宇髄天悠(うずいてんゆう)が振り返った。
「天悠!おはよう!また稽古に夢中になってしまった!」
「ホント毎朝偉いよなぁ。剣道部の大会、もうすぐだっけか?」
「ああ!今年こそは必ず優勝したい!!君の親戚の天満さんも素晴らしい活躍ぶりだな!!」
「あー体操の大会のやつね。毎晩、親戚が誰かしら来てさ、お祝いっつって、どんちゃん騒ぎしてるわ」
生徒達は担任が来るまでおしゃべりに夢中になる。
そんな中、星灯はちらりと桃寿郎を見つめていた。
…桃(もも)ちゃん、
またぎりぎりに登校してきて…
これは今日に限ったことではなかった。直接本人達から聞いたわけではないのだが、二人は遅刻を避けようと、他所の家の庭を通って近道をしたり、少し前には見回り中のパトカーに接触しかけたこともあったらしい。
星灯は小さく溜息をつく。時折見せる、桃寿郎の範疇を超えた行動に、星灯はただただ心配になるのだった。
「桃寿郎くんって、いつ見ても元気溌剌だよねぇ!」
星灯の真後ろに座る燈子が、ずいっと顔を覗かせた。
「…まったくもう…、あれだけ時間には気をつけてっていつも言ってるのに…」
心配そうに桃寿郎を見つめる星灯。そんな星灯を燈子はにやにやと見つめる。
「星灯、ほんっとに桃寿郎くんのこと、大好きだよねっ!恋人が幼馴染みってなんか憧れちゃうなぁ」
「…っ!!ちょっ…!もう!燈子ったら!!」
照れてる〜!と燈子に茶化され、星灯はむうっと頬を膨らませた。星灯のそーゆーとこ超可愛いっと更に頬を突かれ、星灯は益々頬を赤らめた。