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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第22章 紡がれた約束〈煉獄桃寿郎〉





『灯里(あかり)、では行ってくる』

『はい、此処でお帰りをお待ちしていますね。杏寿郎さん』







 ああ、

 この夢…







星灯(ひかり)は、夢を見ていた。

時折見る、不思議な夢。


この男女は、見送りをしているところなのだろうか。

髪を肩で括っている着物姿の女性と、学ランのような服に炎のようなマントを羽織る明るい髪をした男性がそこに立っていた。その腰には、刀のようなものも見受けられる。




 アカリ…?

 キョウジュロウ…?


 一体 誰なの…?




この二人を、何度夢で見てきただろう。



 今日こそ 二人の顔を…



星灯は、夢の中で必死に目線を上げるも、



「…──星灯ー?いつまで寝てるのー?遅刻するわよー?」



母の声に、ぱちりと星灯の目が開いた。見慣れた天井が視界に広がる。


「…はぁーい…」


星灯は大きく深呼吸をした。


 …また 顔を見れなかったな


星灯は何度もその顔を見ようと試みるが、いつも直前で夢から醒めてしまうのだった。



 でも

 どうしてだろう


 どこか 懐かしい感じがする…



そして締め付けられるような、きゅっとした切ない胸の痛み。

出会ったこともない人なのに、不思議と近くに感じる。


 …一体 誰なんだろう…


星灯はベッドから起き上がり、身支度を始めた。


・・・


「炭彦!!おはよう!!」

「あ、桃寿郎くん、おはよう〜!」


歩道を全速力で走る学生服の二人。

まだどこか眠気まなこの赤みがかった髪色の少年・竈門炭彦と、焔色の髪を靡かせる溌溂とした少年・煉獄桃寿郎は、今日も元気よく颯爽に駆けていく。


「今日、間に合うかな〜?」

「このまま行けば余裕だろう!!」


稽古をつい長引かせてしまった!とにこやかに走る桃寿郎に、桃寿郎くんらしいね〜!と楽しそうに笑う炭彦。

この登校スタイルが、二人の定番になっていた。


学校の門が閉まるのは8時20分。既に残り5分を切っていた。
校門を直前に、二人の速さが更に加速していく。


「村田先生!!またあの二人が!全速力で向かってきます!!」

「!? 今日もか!!門を、門を閉めろーーッッ!!!」


教師二人がガラガラと門を閉め始めるも、炭彦と桃寿郎は勢いよくその門に手を掛けた。

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