第21章 心ときめく私のレシピ〈煉獄杏寿郎〉
杏寿郎の緋色の瞳が、かれんを捕らえて離さなかった。
かれんは、そっとその想いを杏寿郎へと告げた。
「…初めてお会いした時から、煉獄先生の素敵な笑顔に、私は惹かれていました。煉獄先生が…、…杏寿郎さんが、私は大好きです…っ」
心臓がばくばくと鳴り止まない。
かれんの頬に涙が静かに伝った。
杏寿郎はかれんの肩を持ち振り向かせると、頬を流れた涙を指先でやさしく拭ってくれた。
「檜原先生に先越されてしまったな…。3年前、檜原先生と初めて挨拶を交わした日から、俺はその笑顔に心惹かれていた」
時が止まったかのように、かれんと杏寿郎はただ見つめ合う。
「…かれん、君が好きだ」
「…!」
かれんの目から、涙が溢れて止まらない。
杏寿郎は、そのままそっとかれんを抱きしめた。
「…もうそんなに泣くんじゃない。目が腫れてしまうぞ」
「ご、ごめんなさい。とっても嬉しくて…っ」
杏寿郎はぽんぽんと、かれんの頭をやさしく撫でてくれた。
「泣いたかれんも可愛らしいが…、笑った顔を見せてくれないか?」
泣き顔をも褒めてくれる杏寿郎に恥ずかしくなるかれん。杏寿郎を見上げると、柔らかく微笑んでくれた。かれんもそれにつられるように、にっこりと杏寿郎へと微笑む。
「私、…杏寿郎さんが、大好きです…!」
「俺も、かれんが大好きだ」
杏寿郎はかれんの頬をそっと撫でた。
すると突然、はっと杏寿郎の目が見開く。
「すまない…!突然呼び捨てにしてしまったな…っ」
「ううん、大丈夫ですよ!大好きなひとに名前を呼んでもらえるって、とっても幸せです…!」
「そうだな。でも、校内では“檜原先生”と呼ばなければいけないな…。うむ、気をつけなければ!」
「そうですね、私も気をつけます!」
「…その、週末の件についてだが…、先程の話を進めてもいいのだろうか?」
「もちろんです!杏寿郎さんにとっておきのお料理をご馳走しますね!」
「ありがとう!今から楽しみだ!」
にこにこと嬉しそうにする杏寿郎に、かれんの心が和む。
好きな人と想いが通じた二人は、喜びに頬を染めた。