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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第21章 心ときめく私のレシピ〈煉獄杏寿郎〉




「厚かましいことだとは重々承知しているのだが、檜原先生の手料理を是非とも頂いてみたい。…しかし…、それでは檜原先生へのお礼にならないな…。むぅ、どうしたものか…」

うーんと顔を顰める杏寿郎。

かれんは、ただ嬉しさで、胸がいっぱいになった。


「…あの、煉獄先生、私…、煉獄先生に喜んでいただけたら、それだけでとっても嬉しいんです。なので煉獄先生がお好きなお料理を、作らせていただいてもいいですか…?」


緊張しながら杏寿郎の瞳を覗くかれん。杏寿郎はかれんの想いに、嬉しさが込み上げた。

「…何だか俺の我儘ばかり押し付けてしまっているな。檜原先生のご厚意に、甘えてしまっても良いのだろうか…?」

「はい…っ!もちろんです!私…夢だったんです。いつか大好きなひとに自分の料理を食べ……、」

「?!」


「・・・はっ!!!」


かれんは杏寿郎を見つめたまま、固まってしまった。


 私、今なんてことを…っ


きっと今、まさにこの瞬間、自分が杏寿郎のことを好きだということが、完全にバレてしまっただろう。美味しそうにスイートポテトを食べる杏寿郎の横顔を見て、しかも自分の手料理を食べたいとまで話してくれたことに、ついかれんは舞い上がってしまった。

もう取り返しはつかないと、かれんの心がずきんと痛んだ。

「す、すみません…っ。今のは、忘れてください!本当、何でもなくて…!」

空いたお皿を下げますね!とかれんは杏寿郎に顔を見せないように、簡易キッチンのシンクに皿を置いた。軽率な発言をしてしまったと、かれんは悔いた。杏寿郎に料理を食べてもらいたいと軽々しく話したこと、そして今のこと。杏寿郎を失望させてしまったのではと、視界が涙で滲んだ。


 …私、何やってるんだろう…


かれんは涙を堪えながら、皿を洗おうと蛇口へと手を伸ばした。

すると後ろから、杏寿郎の手がすっと伸び、蛇口に添えられたかれんの手をそっと握ってくれた。


「…大好きなひと、というのは…、俺のことなのか…?」


いつもより少し低い声色とともに、真後ろにいる杏寿郎の体温がかれんの背に伝わる。
ゆっくり振り返ると、杏寿郎がじっとかれんを見つめていた。

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