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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第21章 心ときめく私のレシピ〈煉獄杏寿郎〉



・・・

気付けば、時計の針は20時半を回っていた。

 お腹も空いたし
 今日はもう帰ろうかな…

かれんは荷物をまとめると、家庭科準備室を後にした。



 …あれ 職員室に電気がついてる…

 まだ誰か残ってるのかな


かれんはそうっと職員室の扉を開けた。


 …っ!

 れ、煉獄先生だ…っ!


かれんの視界に飛び込んできたのは、密かに想いを寄せている杏寿郎の後ろ姿だった。

かれんの席は杏寿郎の後ろの席で、何かと話すことも多く、いつでも明るく温厚で、優しい笑顔を向けてくれる杏寿郎に、いつのまにか心惹かれていた。
かれんがキメツ学園に着任して間もない頃、教師としても先輩である杏寿郎は、何かと気にかけてくれていた。気付けば片想いをして3年程。その気持ちは日に日に増していくばかりだった。


「煉獄先生、遅くまでお疲れ様です…!」

「! 檜原先生!」


かれんの声にくるりと振り向く杏寿郎と目が合った。それだけでかれんの心臓は、ばくばくと鳴り響く。

「檜原先生も残業か!遅くまで大変だったろう」

「あ、ありがとうございます!でももうこの時期には慣れっこです!採点と部活動の準備もしていて、遅くなってしまいました…っ」

「部活動?ああ!檜原先生は料理研究部の顧問だったな!」

「そ、そうなんです!採点の合間にスイートポテトの準備もしていたりで…」

「む!?スイートポテトか!」

「はい!来週の研究テーマがスイートポテ…」


 グ〜〜〜〜〜〜ッ・・・


「「 …!! 」」

杏寿郎の腹から聞こえた豪快な空腹音に、二人は目が点になってしまった。

「…む、教師として不甲斐なし…!失礼した!」

杏寿郎が恥ずかしそうにそっぽを向く。

「い、いいえ!…あ!」

「…? どうした?」

かれんは先程作ったスイートポテトの残りを、準備室の冷蔵庫にしまったことを思い出した。

「あの、煉獄先生…、もし良かったら、先程作ったスイートポテトがあるんですが…、召し上がりますか…?」

「本当か!!でも檜原先生の分が無くなってしまうだろう?」

「いえ!私はもう試食しているので大丈夫です!…あ、スイートポテトはお好きでしたか…?」

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