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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第21章 心ときめく私のレシピ〈煉獄杏寿郎〉




「む!終わらんな!!」


夜19時。
誰もいない職員室に、歴史教師・煉獄杏寿郎の声が響き渡る。

キメツ学園は只今、学期末試験の真っ只中だった。



遡ること1時間前の事。


「…煉獄にしては珍しいな。残業か」


今まさに帰宅しようとしている化学教師・伊黒小芭内がちらりと杏寿郎を見た。

「うむ!皆に歴史の理解を深めて貰いたく、記述式の回答を複数設けたところ、予想以上に採点に時間が掛かってしまってな!」

「煉獄先生、真っ面目だねぇ!」

小芭内の隣で同じく帰宅しようとしていた美術教師・宇髄天元も杏寿郎に声を掛けた。

「しかしこれも、大切な生徒の為!俺の責務だ!」

「教師の鏡だね〜!ま、程々にな!先帰んぞ〜!」

天元はひらひらと手を振り、小芭内と共に職員室を後にした。


・・・


杏寿郎は手元の腕時計を見る。
時計の針は間も無く19時半を指そうとしていた。


 まだ2クラス分も残っているな…
 もう少しやっていくか…


杏寿郎は、よし!と気合を入れると、再び回答用紙に目を向けた。


・・・


 …全然終わらない…


こちらでも、採点に奮闘する教師が一名残っていた。

家庭科教師兼、料理研究部顧問の檜原かれんは、家庭科準備室でその作業に追われていた。試験明けにある料理研究部の準備も進めなければならない為、かれんはてんてこ舞いだった。


 採点って意外と時間が掛かるのよね…


来週の料理研究部のテーマは“スイートポテト”だった。様々な銘柄のさつまいもを用いて、スイートポテトを作ることになっていた。

先刻、試しに作ってみたのは安納芋のスイートポテト。砂糖を殆ど使わなくても十分に糖度があり、一口食べるとあまりの美味しさに止まらなくなってしまうほどだった。


 我ながら、上出来ね…!
 これは最っ高に美味しいスイートポテトだわ!


きっと生徒皆も喜んでくれるだろうと思うと、かれんはわくわくと心弾ませる。自分の考えたレシピを美味しいと食べてくれる事以上の喜びは他にない。


 恋人がいたら どんなに楽しいのかしら…


殆ど恋愛経験がないかれんは、頬を染めながらふわふわと夢の空想に浸る。


 …って、採点!丸付けしなきゃ!


かれんはぽこんっと頭を叩くと、再び赤ペンを握った。


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