第19章 還るところはいつも〈煉獄杏寿郎〉
「隠し味というものだな!形も味も完璧で、かれんの餃子を食べられる俺は幸せ者だ!」
「ふふっ、そんなに褒めてもらえると何だか照れちゃうなっ」
照れた顔をさっと隠すかれんに、杏寿郎は目を細めた。
杏寿郎はかれんから包み方を教わりながら、丁寧に餃子を包み進めていく。
無事に合計50個の餃子を包み終え、フライパンを温めて油を引く。円を描くように餃子を並べて、裏面に焼き目がついたところで少量の水を回し入れて、蓋をして暫く蒸す。水分が飛んだ辺りで蓋を取り、軽く強火にしてこんがりと焼き目を付けたら完成だ。
皿に盛り付けている最中から、早く食べたい!と子どものようにわくわくする杏寿郎に、かれんはまたもや頬が緩む。
「じゃあ食べよっか!」
「うむ!では、」
「「いただきます!」」
二人は手を合わせると、出来立ての熱々の餃子を一口頬張った。
「うまいっ!!!」
杏寿郎の一段と元気の良い声が部屋中に響いた。
「杏寿郎の“うまい!”いただきました!…うん!自分で言うのもあれだけど、ほんと美味しい!」
「うむ!これは絶品だな!!」
ぱくぱくと箸が進み、止まらない。餃子は瞬く間に皿から消えていった。
美味しそうに餃子を頬張る杏寿郎を見て、かれんは大切な人と食卓を囲める幸せを噛み締めた。仕事の疲れなど、もう感じていなかった。辛いことがあっても、ここに還れる幸せは、他の何にも代えることのできない宝物だ。
当たり前なことは、決して当たり前ではないとかれんは改めて気付かされた。
「こうやって…、一緒にご飯を作って、一緒に食べられるって、本当に幸せね」
「ああ、本当に。どんな瞬間も、当たり前ではないのだな。かれんと過ごせる時間を…心から愛おしく思う。かれん、いつも傍にいてくれてありがとう」
幸せそうににっこり笑う杏寿郎。
この笑顔が大好きだと、かれんは思う。
「私も、杏寿郎にたくさん支えてもらって、感謝の気持ちでいっぱい。こちらこそ、いつもありがとう。改めてこれからもよろしくね。…私、杏寿郎が大好き!」
「ああ、これからも楽しい思い出を一緒に作っていこう。俺もかれんが大好きだ!」