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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第19章 還るところはいつも〈煉獄杏寿郎〉




『遅くまでお疲れ様!今帰り道だ!』


杏寿郎の文面にかれんは綻ぶ。特にルールを決めたわけではないが、仕事が終わるとお互い連絡を送るようになっていた。いつもはかれんから連絡をすることが多かったが、今日は杏寿郎から先に退勤の連絡が届いた。


『杏寿郎もお疲れ様。ちょうど今終わったところ!今から私も帰ります!』


かれんは仕事を切り上げ、鞄に荷物をしまうと、オフィスを後にした。


・・・

かれんがマンションに着き、玄関の扉を開けると、既に家の中が明るかった。誰かが待つ家に帰る幸せに、かれんの心がほっこりあたたまる。


「ただいま〜」

「お、おかえり!!」


キッチンの方から杏寿郎の声が聞こえ、かれんは鞄を置いて着替えるとその声の方に向かった。


「ごめんね、今夕飯作っ…、

 …杏寿郎…??

 これって、もしかして……??」


「うむ!!! ぎょ、餃子だ!!!」


「・・・すごいっ、芸術的ね…!」


思わず本音が出てしまった。タネを皮で包んでいるのだろうが、皮は上手くくっついておらず、中身が見えてしまっている。

「うむ…上手くいかんな…!どうしたらかれんのように綺麗に包めるのだろうか」

一生懸命に餃子と向き合う杏寿郎が可愛らしくて、かれんはくすっと小さく笑った。

「私も一緒に手伝うね!」

「すまない…、遅くまで仕事をしてきたかれんの手を煩わせてしまったな」

「ううん、そんなことないよ!杏寿郎と一緒に何かするの、楽しくて好き」

かれんは餃子の皮を一枚取ると、タネを乗せて手際よく包み込む。

「素晴らしいな!これぞまさに芸術的だ!」

かれんの包んだ餃子を杏寿郎はまじましと見つめた。いつもと変わらず普段通りに包んだ餃子を褒めてもらえて、かれんは嬉しくなった。

「あ!そうだ!」

「? かれん?」

かれんは冷蔵庫から生姜を取り出すと、おろし器で少量おろし、タネに混ぜ込んだ。

「生姜を入れるとさっぱりするし、体もあったまるから、時々入れてるの。今日は寒いからいつもよりちょっと多めに入れみた!」

成程!と杏寿郎が頷く。

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