第19章 還るところはいつも〈煉獄杏寿郎〉
・・・
「かれんさん!!!」
かれんと禰󠄀豆子がランチから戻ると、後輩の甘露寺蜜璃が慌てて駆け寄ってきた。
「かれんさんが先日業者さんに依頼した見積書、手違いで一つ項目が漏れていたみたいなんです…っ」
「えっ…?」
「変更後の見積書が届いたんですが、かなり値段が上がってしまってて…。どうしましょうか…」
どうしてこんなにも色々なトラブルが重なるのだろう。まさに泣きっ面に蜂だ。かれんはメールに添付された見積書を眺めて、ふうと息を吐いた。
「蜜璃ちゃん、対応ありがとうね。私この後、業者さんに連絡してみて…、課長にも相談してみる」
「かれんちゃん、私、何か手伝うよ!」
「うん、ありがとう。その時声掛けるね!禰󠄀豆子ちゃん、蜜璃ちゃん、本当ありがとう!」
かれんは自分のデスクに向かい深呼吸をして、パソコンの画面を見つめた。仕事は上手くいくことばかりでないことは、十分に分かっている。分かっているつもりだ。でも、立て続けに起こると、やっぱり凹む。
でもやるしかない。どんな事にも誠心誠意、一生懸命に最善を尽くせばいい。かれんは無心で、電話を片手に、カタカタとパソコンキーを打った。
・・・
「かれんちゃん、もう終わりそう…?」
時計は既に18時半を指していた。
「うん!あとは明日、課長にオッケーもらえたら、…なんだけど、もうここはオッケーもらうしかない!大丈夫!!何とかする!!」
かれんの必死な笑顔を禰󠄀豆子は気付いていた。
「明日、私も一緒に課長にお願いしにいってもいい?」
「え、っでも、これ、私が担当したものだし…」
「でも、明日、かれんちゃんと一緒にいく。…いいかな?」
禰󠄀豆子の心強い言葉に、かれんの目頭が熱くなった。
「ありがとう、禰󠄀豆子ちゃん。私、あともう少しだけやって帰ろうかな!」
「…そう?無理しないでね。じゃあまた明日」
「うん!また明日ね。気をつけて!」
禰󠄀豆子は手を振って、オフィスを後にした。
・・・
ピロン♪
一人残ったオフィスに、かれんのスマホが鳴った。夫の杏寿郎からだった。かれんはスマホを手に取って、そのメッセージを開いた。