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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第18章 涙を拭いたら〈煉獄杏寿郎 / 竈門炭治郎〉




「炭治郎、目玉焼きの卵、割ってみる?」

「うん!おれ、じょうずにできるよ!」

「おーし!そしたら、卵3つ、お願いします!」

はーい!と元気よく炭治郎がキッチンに駆け込み踏み台に登ると、慎重に卵をフライパンに割り落としていく。

かれんと炭治郎が楽しそうにキッチンに立つ光景に、杏寿郎の心がじんわりとあたたまった。

・・・

「では、行ってくる」

「うん、気をつけてね」
「とうさん、いってらっしゃい!」

かれんと炭治郎が、玄関で杏寿郎を見送る。杏寿郎は炭治郎の目線に腰を下ろすと、大きな手でその頭を撫でた。

「…炭治郎、寂しい思いをさせて、本当にすまない。来週は、必ず水族館に行こう」

「うん…っ!…でも、…と、とうさんが、かえって、きて、くれたら、…それでいい、んだ…っ」

「…! 炭治郎…っ」

突然、炭治郎が泣き出してしまった。目からは大粒の涙が溢れ、声を詰まらせて、必死に歯を食いしばる。

「炭治郎、大丈夫。杏寿郎はちゃんと帰ってくるわ。…心配だったのよね」

かれんの問いに、目元をごしごしと拭いながら、炭治郎はこくんと頷く。

「…炭治郎、偉かったね。頑張ったね」

かれんもよしよしと、炭治郎の小さな背中をさすった。

「炭治郎…」

杏寿郎は炭治郎を呼ぶと、ぎゅっと抱きしめた。

「こんなにも悲しい思いをさせて、本当にすまなかった。苦しかったろう…」

炭治郎は杏寿郎の腕の中で、ぶんぶんと顔を横に振った。

「…とうさんが、…とおく、にっ、いっちゃう、のが、…かなしかったんだ…っ」

杏寿郎はさらにきつく、炭治郎を抱きしめた。

暫くそうしていると、炭治郎の呼吸が落ち着きを取り戻してゆく。杏寿郎はそっと体を離すと、炭治郎をじっと見つめた。炭治郎のつぶらな瞳には、涙が潤む。

「…炭治郎。もうそんなに泣くんじゃない。目が腫れてしまう」

杏寿郎がワイシャツの袖で、炭治郎の涙をそっと拭う。

「お土産に、何か欲しいものはあるか?」

優しい眼差しで、杏寿郎は炭治郎に訊く。

その質問に、炭治郎ははっと目を丸くするも、にっこりと笑った。

「とうさんが、かえってきてくれることと、…あと、あとね、とうさんとかあさんと、いっしょに、すいぞくかんっ!」

その答えに、杏寿郎もかれんも笑顔になった。

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