第18章 涙を拭いたら〈煉獄杏寿郎 / 竈門炭治郎〉
「では歯を磨いておいで。一人でできるか?」
「うん!」
炭治郎は食べ終わった皿を流しに置くと、そのまま洗面所に向かう。
「寝かしつけは私がするから、杏寿郎はもう休んで?明日は早いでしょう?」
「あ、ああ…、何から何まですまないな。…炭治郎、きっと酷く落ち込んでいるのだろうな。父親として不甲斐ない…」
「炭治郎も…少しずつ大きくなってるのね。ちゃんと杏寿郎の気持ちも分かってくれているわ」
やさしく微笑んでくれるかれんに、杏寿郎の気持ちがふわりと軽くなるようだった。
「杏寿郎、大丈夫よ」
そう言うと、かれんは杏寿郎を後ろからぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、かれん」
「ううん。また三人でお出かけの予定、立てよう?」
「そうだな」
杏寿郎はかれんの手をそっと握り締めた。
・・・
「…────そして、いるかのあかちゃんは、ぶじにかぞくのもとへ、かえってくることができました。めでたしめでたし!」
「…ねぇ、かあさん…?」
「ん?」
炭治郎の部屋でかれんが本を読み終えると、しゅんとした表情をしていた。
「…とうさんは、かえってくる?」
「もちろん!帰ってくるわ!」
「…ぜったい?」
「うん、絶対。いつもお仕事が終わると、ちゃんとお家に戻ってくるでしょう?」
「…うん」
「…戻ってこないと、思っちゃったの?」
「うん、…いつも、とうさんはおうちにいたから」
確かに炭治郎が生まれてから、杏寿郎の出張は数える程しかなかった。幼かった炭治郎の記憶には、杏寿郎が家にいることが殆どだったのだ。
「大丈夫。ちゃんと帰ってきてくれるわ。そしたら、また三人で水族館に行こうね」
「…うん…!」
「さあ、もう眠らなくちゃ。…素敵な夢を見れますように」
かれんは炭治郎の額にちいさなキスを落とした。
・・・
翌朝、一番に起きたのは炭治郎だった。部屋中のカーテンを一生懸命に開けてくれた。
「炭治郎、おはよう。早起きをして偉いな」
「うん!とうさんに、いってらっしゃい、したいから!」
にっこり微笑む炭治郎に、杏寿郎も笑顔になる。かれんもキッチンで朝食の準備を始めていた。