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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第17章 やさしい花束〈不死川実弥 / 時透無一郎〉




「無一郎!!怪我はねぇか!?」

「…う、うん…、でも…っ、かあさんのおはなが…っ」

玄弥はしゃがんで無一郎を抱き寄せ、何度も頭を撫でた。

「…ご、ごめんなさ…っ」

「無一郎は何も悪くねぇ…」

「…かあ、さ…っ」

無一郎の涙は止まることはなかった。玄弥は無一郎を抱き上げると、背中を摩りながら家に向かっていった。

・・・

「…もうそろそろかな」

かれんは何度も窓の外を見ては、落ち着かない様子だった。

「かもなァ。そろそろ外出てみるか」

「うん…!」

かれんと実弥はコートを羽織り、家の外に出ると今か今かと道の角を見つめた。


すると、そこに玄弥に抱き抱えられた無一郎が姿を現した。


「無一郎…!!」「!!!」


かれんと実弥はその様子に何かあったのかと駆け足で、玄弥の元に向かった。
かれんと実弥の声を聞いた無一郎は二人の顔を見た途端、また泣き出してしまった。

「か、かあさ、とう、さ…っ」

「無一郎っ??どうしたの…?!」

無一郎は玄弥の腕から降りると、すぐさまかれんに抱きついた。かれんはよしよしとその小さな背中を撫でる。
玄弥が申し訳なさそうに、かれんに話しかけた。

「かれんさん、ほんとすみません。俺がついていたのに…」

「どうした?何があったァ?」

「その、…」

すると無一郎が涙を堪え、声を詰まらせながら、かれんと実弥に起こったことを話し始めた。

「…ぼ、ぼく、ぼくね、…おはなを、みちに…、…おとしちゃったの」

「道に…??」

かれんが無一郎の頬についた涙をそっと拭う。
すると、玄弥が潰れてしまったブーケをかれんに見せた。

「…!!」

「本当にすみません…。俺、無一郎が横断歩道を渡ったのに安心して、それ以外何も気付けなくて…。…花を拾いにも行けなくて…」

玄弥が悔しそうに項垂れる。その頭を実弥がぽんぽんとやさしく撫でた。

「ううん、玄弥くん、謝らないで?無一郎も玄弥くんにも何もなくて本当に良かったわ。…無一郎?偉いね。たくさん頑張ったね。素敵なお花をくれてありがとう」

かれんは目を潤ませながら、無一郎の頭を何度も撫でた。かれんの言葉に、無一郎の瞳にはまた涙が溢れてくる。

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