• テキストサイズ

檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第17章 やさしい花束〈不死川実弥 / 時透無一郎〉




「…かれんは俺にとって世界一の可愛い恋人だなァと思ってよ」

「!!!」

するとかれんの口元に、実弥の口づけがふわりと落とされた。


・・・


「すみません。この…おはなをください」


無一郎が選んだのはクリスマスローズだった。雪のように真っ白な花びらが美しく、葉の濃い緑がよりその白さを引き立てていた。
無一郎の声を聞いてやってきた年配の男性が優しく声を掛けてくれた。

「いらっしゃい。…おや?今日は一人なのかい?いつもお母さんと来てくれているね。お母さんとは来てないのかな?」

「うん。ひとりで、きました」

「そうか、それは立派だねえ。欲しいお花はこの白いお花かな?」

無一郎はこくんと頷く。

「何本、欲しいのかな?」

「……、…このくらい」

無一郎は両手を使い、自分の顔の幅にその手を広げた。

「おお、ではブーケにしたほうがいいかな?」

「…ぶーけ?」

「こう…何本もお花を束ねて…、花束にもできるよ」

「…はなたば…」

無一郎の頭の中には、何故かお花畑のイメージが浮かぶ。要するに沢山の花が集まっている、と無一郎は解釈し、その男性にうんうんと頷いた。

「…おはなばたけで、おねがいします」

「…お花畑…?ああ、成程、分かったよ。少し待っててね」

そう言って男性は数本のクリスマスローズを花瓶から取ると、鋏でパチンパチンと茎を斜めに切り落とし、手際よく纏めてゆく。最後に透明なセロハンで花束を包(くる)み、白いリボンをきゅっと結んでくれた。

「はい、できた。…こんな感じで、どうかな?」

「…!きれい…」

無一郎はそのブーケをまじまじと嬉しそうに見つめた。それは良かったと男性は微笑む。無一郎はポシェットの小銭入れからお金を取り出し、手渡した。

「はい、ありがとう。…これはお釣りね」

無一郎は小銭を受け取ると、男性から手渡されたブーケを両手で抱えるように持った。

「そうだ、これに入れて持ち帰るといい」

男性は後ろの棚から紙袋を取り出し、ブーケをその中に入れてくれた。

「持てるかな?」

無一郎は少し大きめの紙袋に小さい腕をしっかり通す。袋のからほんの少し、花が見え隠れする。

「落とさないようにね。帰り道も気をつけて」

「ありがとう、ございました」

無一郎はぺこりと頭を下げると、店を出た。

/ 218ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp