第16章 積もるのは、恋〈煉獄杏寿郎〉
「こんなに真っ赤にして…、風邪引いちゃったらどうするの?」
寒さで赤くなる杏寿郎の両耳にかれんはそっと手を当ててくれてた。優しく微笑んでくれるかれんに、杏寿郎はただ見惚れていた。
「…杏寿郎くん、大丈夫??どこかカフェであったまる??」
心配そうに見つめるかれんをぐいっと引き寄せ、杏寿郎はその場でぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ、杏寿郎くんっ…!!こんな場所で恥ずかしいよ…っ!」
「…かれんを、驚かせたくてな。見事に失敗してしまった」
少ししょんぼりと話す杏寿郎の声色に、かれんはその背中をぽんぽんと摩った。
「…私は杏寿郎くんに会えるだけで、とっても幸せなんだから。…でも、ありがとう。寒い中待っててくれて…。とっても嬉しい…っ!」
杏寿郎がかれんに顔を向けると、にっこりと微笑んでいた。
この笑顔には敵わないと、杏寿郎の眉尻が下がる。
杏寿郎はコートの右ポケットに手を入れると、小さい箱をぎゅっと握りしめた。
「…かれん。目を、閉じてもらえるか?」
「…目を? う、うん!」
かれんは杏寿郎に言われたまま、そっと目を閉じた。
杏寿郎はコートのポケットから、手のひらにすっぽり収まる赤いベロア素材の小さな箱を取り出した。その箱を開くと、杏寿郎はかれんの左手の薬指にそれをはめた。透明に煌めく、一粒の宝石を纏った指輪が、かれんの手元を輝(てら)した。
「…!! っえ、杏寿郎くんっ…?!」
「…かれん。これを、受け取って欲しい」
かれんは慌てて目を開けて、微かに重さを感じる左手の薬指に視線を落とした。
「…かれん。心から、君を想う。かれんと一緒に、幸せになりたいんだ。…俺と結婚してくれないか」
かれんの瞳から、ぽろぽろと涙が溢れた。嬉しさのあまり声を詰まらせ、思うように返事が出来ない。かれんは、涙を堪えるように、何度も、何度も頷いた。
「うん、うん…っ!私も、杏寿郎くんと一緒に幸せになりたい…っ。どうしよう、夢みたい…っ」
左手の薬指に、かれんは驚きを隠せない様子だった。杏寿郎がかれんの両手を優しく包み込む。