第15章 灯る君のてのひらを〈煉獄杏寿郎〉
再び杏寿郎が戻ってくると、その手には何か包みを持っていた。
「…これを、かれんに。開けてみてくれないか?」
かれんは薄い柔らかい包装紙を解くと、そこにはハンドクリームが入っていた。
「! これ、私が欲しいって言ってたのだ…!」
「再入荷をしたと、店から連絡が入ってな。原稿中だったから、終わったらかれんに渡そうと思っていたんだ」
「嬉しい…!ありがとう、杏寿郎くん…っ!」
杏寿郎はそのハンドクリームをかれんの手から取ると「いつも頑張るかれんに」と言いながら、ハンドクリームを塗ってくれた。マンダリンとローズマリーのやさしい香りが、かれんの心を癒していく。
「とっても良い香り…!人気な理由が分かる気がする。…杏寿郎くん、いつも私を支えてくれて、ありがとう」
「いや、礼を言うは俺の方だ。いつもかれんには、仕事と家事と両方を任せっきりにいしてしまっていると、反省していた」
「ううん、だって私はずっとお家にいる身だもの。それぐらい当然よ。私、家事も好きだし、そいうときに浮かぶアイディアも結構あって。…でも最近はそれすらも思い浮かばなくて。…もう辞めどきなのかなって、思っちゃったの」
「かれんが創り出す世界が、…この手に込められた夢のある作品が俺は大好きだ。かれん、大丈夫だ。どうかありのままのかれんで、絵を描いて欲しい」
紅い緋色の瞳に見つめれて、かれんは大きく深呼吸をした。
「…うん、私、もうちょっと、頑張ってみる」
「ああ。かれんなら、絶対に大丈夫だ」
かれんはそこから無我夢中で絵を描いた。杏寿郎も仮眠をとっては、かれんの様子を見ながら、あたたかいココアを入れてくれた。
そして朝6時。
外は真夜中の暗闇が嘘のようになくなり、綺麗な朝焼けが広がっていた。
「…できた…!!杏寿郎くん!できたよ!!」
「本当か!かれん、おめでとう!!」
「ずっと傍にいてくれて、ありがとう。眠たいでしょ?」
「今日は休みだ。原稿を届けたら、一緒にゆっくりしよう」
「うん…!」
ピピピ ピピピ ピピピ
かれんのスマホが鳴った。善逸からだった。