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檸檬香る、その恋に【鬼滅の刃 / 短編集】

第2章 杏子色に導かれて〈不死川実弥〉




かれんは実弥に手を引かれたまま、駅に向かっていた。実弥の大きな背中をかれんはただ眺めていた。鼓動が鼓膜に響いて煩い。夜風がかれんの赤く染まる頬を撫でその熱を冷やしていくが、身体にはまだ熱が残っているようだった。アルコールに酔っているのか、目の前の実弥に見惚れているのか分からない。かれんはもう、実弥に心を奪われていた。

(実弥さんの手…あったかいなあ…)

思わずかれんは綻ぶ。それを振り向いた実弥が見ていた。

「…すみません、なんか強引なことして」

実弥がそっとかれんの手を解いた。

「いいえ!全然…!こちらこそすみません。初めて会った方にご迷惑をかけてしまって…」

「全然、迷惑じゃないですよ。…綺麗な目ェしてんなぁって思って、つい…」

「え…?」(今なんて…言ったの…?)

「…いえ、あ、あのホームどっちですか?」

「よ、四番線です。実弥さんは…?」

「俺、二番線です。…反対ですね」

少し寂しそうに実弥は言った。するとスマホを取り出してその画面をかれんに見せた。

「俺は不死川実弥といいます。良かったら連絡先、交換しませんか?」

「え…っ」

まさかそんなことを言われるとは思ってもおらず、かれんは実弥を見たまま固まってしまった。実弥もかれんのその様子に、はっとしてスマホを仕舞おうとした。

「っすみません、失礼ですよね。会ったばかりなのに連絡先聞くとか…」

「いえ!その、全然、大丈夫です…!これ、私の連絡先です!」

かれんは自分のスマホを実弥に差し出した。実弥は照れながら仕舞いかけた自身のスマホをポケットから取り出した。二人は互いの連絡を登録した。

「ありがとうございます。かれんさん…ですね。時々あのバーに行くんで、今度一緒に…飲みませんか?」

「はい!その時は是非!…あ!そうだ、お会計…!すみませんっ、私の分までお支払いしてくださってましたよね?!払います!」

「そんなんいいですよ。その代わり暇な時でいいんで、返事くれたら嬉しいです」

「もちろん連絡します!次は私がお支払いしますね!」

「連絡、楽しみにしてます。帰り道、気をつけて」

「ありがとうございます。…実弥さんも」

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