第12章 ●ハマる●
「チョコの味がした。」
「でしょ?好き?」
「バニラの方が好き。」
「違うよ。俺の事。」
「………好き。」
「照れてるの?そういところも好きだよ。」
つい2日前の出来事を思い出してしまった。
あの時は幸せいっぱいだったのに。
今はドン底。
その場に崩れ落ちた。
そして泣いた。
泣きまくった。
泣いて泣いて泣きまくった。
嘘をつかなければ悟に嫌われなかった?
悟が好きだって言えばよかったの?
だけど、彼女が居る事を隠してた悟は何なの?
何で、こんなに好きにさせといて彼女作ったの?
悟でしょ?
私をあなたの虜にしたのは。
そんな事を考えながら夜通し泣いた。
トントン
朝になり、誰かがドアをノックした。
硝子が様子を見にきてくれたのかと思った。
ガチャ
「げ、とう?」
「ひどい顔だね。可愛い顔が台無しじゃないか。」
夏油は微笑んでいた。
「えっ?ひどい?ちょっと待って。」
慌てて鏡を見る。
「うわっ!目真っ赤。しかも腫れてる。」
目は充血して真っ赤になっていて、瞼は腫れていて、とても人前に出られる顔ではなかった。
「朝食を買ってきたんだ。一緒に食べよう。硝子も誘ってね。」
夏油はそう言ってコンビニの袋を見せた。
「ありがとう。ごめん、ちょっと待っててもらってもいい?シャワー浴びたいから。」
「わかったよ。それじゃあ、硝子のところにいるから。準備出来たらおいで。」
「わかった。」
昨夜は泣き疲れてそのまま寝てしまっていたから、制服がシワだらけになっていた。
「クリーニングに出さなきゃ。」
熱いシャワーを浴びる。
とにかくこの顔をなんとかしないと。
バスルームから出て、鏡を見た。
熱いシャワーを浴びたおかげか、さっきよりは少しマシになった。
替えの制服を着て硝子の部屋へ向かった。
思いっきり泣いたお陰で少しスッキリした。