第12章 ●ハマる●
「五条!」
次の日、悟と2人で校内を歩いていると後ろから彼の名を呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、そこには綺麗な女の人がいた。
「ミサト……せ、んぱい?何で?」
悟の様子が少しおかしい気がした。
「用事で近くまで来たからちょっと寄ってみたの。久しぶりに夏油や家入にも会いたいし。あら?この子?例の転入生は。」
例の転入生?
例のって何?
例の何?
「そうだよ。」
ぶっきらぼうに答えた悟。
「なあに?あたしに向かってその口のきき方は。」
その人は悟に近づくと馴れ馴れしくもぉっ!と言いながら彼の腕に絡み付いた。
何?この女。
スキンシップ激しすぎ。
どういう関係?
それにしてもこの女、めちゃくちゃ美人で尚且つスタイル抜群。
背も高くてスラッとしてるし、手足も長くてモデルみたい。
「やめろよな。」
相変わらずぶっきらぼうな悟。
「もぉ、悟ったら何なのよ。初めまして、私はここの卒業生の山本ミサトでーす。よろしくね。」
私を見てニコッと笑う女。
髪の毛は茶色でウェーブのかかったロング。
目が大きくてぱっちりの二重。
まつ毛も長くてくるんと上向き。
鼻の形も綺麗で、唇はぷっくり。
女の私でも見惚れてしまうぐらい。
「初めまして。龍恋です。」
「あなた、本当に高専生?ずいぶん可愛いらしいわね。五条と並んでたら凸凹コンビじゃない。アハハ。」
女は私を見下ろして言った。
これってもしかしてマウント取られてる?
もし、そうだとしたら完全に負けた。
だって、この女との方がお似合いだもん。
「先輩、傑達なら保健室だよ。恋、おいで。」
悟は私の手を掴んだ。
強めに。
「悟、痛いよ。どうしたの?」
廊下の角を曲がり、女が見えなくなったところで聞いてみた。
「何でも…ないよ。」
絶対何かあるだろ。
「そう。わかった。」
何があるのかめちゃくちゃ気になったけど、これ以上は聞けなかった。