第10章 ●囚われる●
その日の夜、建人から電話があった。
「すみません。本家に連絡してしまって。」
「いいのよ、建人。私、今回の事で自分の弱さを思い知った。だから、強くなりたいって大ババ様にお願いしたの。」
「休学の件は聞きました。修行するんですよね。半年間ですか?」
「うん。ちょっと長いよね。」
「はい。それで………五条さん、との事はどうなりましたか?」
建人は少し言い淀んだ。
私は意を決した。
「五条は……何考えてるかサッパリで。私は今アイツの事は考えられない。だけど、建人を裏切った事は事実だし。これ以上、甘えられない。ごめんね。もう、建人の彼女ではいられない。」
「そうですか………わかりました。」
少しの間を置いて建人がそう言った。
「うん。当分アイツの事は考えない。禁欲して修行に励むつもり。」
「きん、よくですか?」
「大ババ様の言い付けで。男断ちしろだって。そうすると強くなるらしいよ。私、強くなるよ。」
「わかりました。頑張って下さい。別れてもあなたは私の大切な友人です。」
「あ、りがとう。建人。さよなら。」
「さようなら。」
最後まで建人は優しかった。
電話を切った後、号泣した。
次の日から本格的に修行が始まった。
指導してくれるのは大ババ様の弟子や使用人達。
たまに大ババ様。
徹底的にしごかれた。
五条はしょっちゅう会いにきた。
建人と別れた後に来た時、
「七海から別れたって聞いた。大丈夫?」
「もう大丈夫。思いっきり泣いたから。」
そう言うと少し寂しそうな顔をした。
たまに硝子も一緒に来た。
「五条どうなった?」
庭を散歩しながら硝子と女子トーク。
「別にどうもなってないけど。」
「五条の事、どう思ってるの?」
「何かしょっちゅうこっち来るから慣れたというか何というか。」
「前はドキドキするとか言ってたじゃん。」
「うーん。そうだけど、どうかなぁ。禁欲生活ももう4ヶ月だからね。五条の事はずっと男として見ないようにしてた。」
「なるほど。禁欲終わったらまた男として見るの?」
「どうだろ?わかんない。」