第10章 ●囚われる●
「あの男は禪院甚爾です。」
「ぜんいん?御三家の?」
「はい、そうです。あの甚爾という男ははみ出しもので、術師殺しの異名があります。」
「母さまの男だったの?あいつがそう言ってた。」
「はい。その様に記憶しております。」
2時間以上車で走り、大ババ様の屋敷に着き大広間に通された。
「ワシのひ孫は揃いも揃って……」
「ちょっと待ってよ。和くんはともかく私は何も悪い事してないでしょ?」
「禪院家のクソガキにさらわれたんじゃろうが。情けない。」
おっしゃる通りです。
「それを、五条のガキに助けられるとは。全くもって情けない。」
それは本当に、自分でも情けないと思う。
五条はまた強くなった。
私も強くなりたい。
「大ババ様、私強くなりたい。だから修行させて下さい!」
頭を下げた。
「よしよし、わかった。それじゃあ、禁欲しろ。」
「きん、よく?」
「お前、禁欲も知らんのか?男断ちじゃ。」
「お、おと、おとこ、断ち?」
「ワシが何も知らんと思うとるのか?壁に耳あり障子に目ありじゃ。ぜーんぶ知っとるぞ。お前がもう生娘じゃない事ものぉ。」
生娘?何言ってんの?このババァ。
ぜーんぶって?どこまで?
「和との事も知っとるわい。」
ゲッ、あれもバレてるの?
ウチの使用人はみんな大ババ様の手下だもんねぇ。
バレるのも当然か。
「和に七海のガキに五条のガキに。お前は次から次へと。男断ちするには丁度いい時期じゃ。」
「そもそも何で男断ちなの?」
「禁欲して修行すれば強くなるんじゃ。」
その時、襖がゆっくりと開く音がした。
そして、あの明るい声が聞こえてきた。
「禁欲?それはないじゃぁんおばあちゃぁん。」
串団子を右手に、左手にはお茶を持った五条が現れた。
「何であんたがここにいるのよ!?」
「だって。俺の可愛い恋ちゃんが連れてかれちゃったから。心配になっちゃったんだよ。」
五条は大ババ様の隣に座り、お茶を啜った。
「五条、一体いつからここにいるの?」
「うんっと、お前が来る1時間くらい前かな。」
「何でそんなに早く来れるの?」
「俺、五条悟だよ?」