第9章 醒める
「特級呪具天逆鉾」
男は俺の首にその呪具を刺した。
「この呪具には術式を強制解除させる効果がある。」
そう呟くと男は俺の体に何度も突き刺した。
そして最期に頭をナイフで刺した。
「少し、勘が戻ったかな。」
倒れながら男の呟きを聞いた。
「五条!」
「死なないって言ったじゃん。」
遠くで恋の声が聞こえた。
俺は夢の中にいた。
待ってろ。
もう泣くな。
助ける。
待ってろ。
しばらくして俺は目覚めた。
そして術師としての能力も目醒めた。
今までとは何かが違う。
覚醒した。
それからの事はイマイチ覚えてない。
気づいたら俺は盤星教本部星の子の家に来ていた。
「よお、久しぶり。恋は無事か?」
建物の中から、恋を抱いたあの男が出てきた。
何でお姫様抱っこなんかしてんだよ。
「……マジか。生きてたのか。」
「大マジ。元気ピンピンだよ。お前、俺の女に何したの?」
「大丈夫だよ。気絶してるだけだ。」
「う…ん。ご、じょう?」
恋が目を覚ました。
「恋、大丈夫か?助けに来たよ。」
「五条!?死んじゃったかと思った。」
「死なないって言ったろ?」
「うん。そうだね。良かった。ちょっと、降ろしてよ!」
「あー気の強い女だな。ちょい、ここで待ってろ。」
そう言って男は恋を木陰に降ろした。
「お前、どうやった?」
「オマエに喉ブチ抜かれた時、反撃は諦めて反転術式に全神経を注いだ。」
俺は今まで反転術式は出来なかったけど、死に際で出来る様になった。
「なるほど。」
「オマエの敗因は俺を首チョンパにしなかったことと、頭をブッ刺すのにあの呪具を使わなかったこと。」
「敗因?勝負はこれからだろ。」
「あー?そうか、そうかもなぁー。」
男は超スピードで俺に攻撃を仕掛けてくる。
だが、俺は術式反転赫で恋と反対方向へ吹っ飛ばす。
「恋、ちょっと待ってろ。」
そう言い残して男の方へ向かう。
かなりの威力だったハズだけど、男は無事だった。
「化け物が。」
男は長い鎖を出し、振り回し始めた。
「殺す!」
へえ?まだそんな気力残ってんだ。
「天上天下 唯我独尊」
今はただただ、この世界が、心地いい。