第9章 醒める
「賑やかな学校だな。」
小さな天内を片手でつまみ、外へ出る。
「馬鹿者!恥ずかしいまねをしおって。」
「呪詛師襲来、後は察しろ。」
とにかく高専へ向かおう!
走っていると電話が鳴り、天内の首に3000万の懸賞金が掛かっていると報告が入る。
「なるほどね。ったく、呪術師は年中人手不足だっていうのに。転職するなら歓迎するよ、おっさん。」
目の前に現れた紙袋を被った呪詛師に言った。
「いやぁ、職安も楽じゃねぇだろ。そのガキ譲ってくれればそれでいい。」
「増えた!5人じゃ!」
天内が叫ぶ。
呪詛師は5人に分裂した。
「どこがいいんだよ。こんなガキ。」
無下限呪術で2体を吸い込み、衝突させていく。
「本体含めMAX5体の分身術式。どれが本体かは常に自由に選択できるんだろ?いい術式持ってんじゃん。なんでそんな弱いのか意味分からん。」
「何で俺の術式を知っている。」
「お生憎様、目がいいもんで。」
サングラスを外した。
「術式反転赫!!あれ?失敗。」
後は普通に殴って終わった。
「何か出来そうな気がしたんだけどなぁ。」
1人ブツブツ呟いていると、後ろで天内が悲鳴を上げた。
「ど、どうしよう?黒井が、黒井が!」
天内の携帯には縛られた黒井さんの写真が送られてきていた。
「すまない、私のミスだ。彼女を1人にするべきではなかった。」
黒井さんが拉致られた事を謝る傑。
「そうか?ミスって程のミスでもねーだろ。相手は次、人質交換的な出方でくるだろ。天内と黒井さんのトレードとか。でも、交渉の主導権は天内のいるコッチ。取引の場さえ設けられれば後は俺達でどうにでもなる。天内はこのまま高専に連れていく。硝子あたりに影武者やらせりゃいいだろ。」
恋の名前は出さなかった。
だってこんな危険な任務やらせるわけにはいかないだろ。
硝子はいざとなったら治療が出来る。
「取り引きには妾も行くぞ!まだオマエらは信用できん。助けられたとしても同化までに黒井が帰ってこなかったら?まだお別れも言ってないのに。」
天内がゴネ始めた。
「その内拉致犯から連絡がくる。もしアッチの頭が予想より回って天内を連れて行くことで黒井さんの生存率が下がるようなら、やっぱオマエは置いていく。」