第9章 醒める
「お嬢さま、その人達は味方です。」
「黒井!」
傑の出した呪霊に乗った女が現れた。
女は天内理子の世話係、黒井美里と言った。
「私の術さ。呪霊操術、文字通り取り込んだ呪霊を操れる。」
傑が言った。
「思ってたよりアグレッシブなガキだな。同化でおセンチになってんだろうから、どう気を遣うか考えてたのに。」
「フンッ、いかにも下賎な者の考えじゃ。いいか天元様は妾で、妾は天元様なのだ。貴様のように同化と死を混同している輩がおるがそれは大きな間違いじゃ。同化により妾は天元様になるが天元様もまた妾となる。」
天内はそう言うと中学校へ向かった。
学校内で夜蛾に電話をかける。
すると、天内の行きたいところに連れて行けと言われた。
「はあ?さっさと高専戻った方が安全でしょ。」
「そうしたいのは山々だが天元様のご命令だ。天内理子の要望には全て答えよとな。」
「ゆとり極まれりだな。」
電話を切り、傑に愚痴る。
「そう言うな悟。ああは言っていたが、同化後彼女は天元様として高専最下層結界の基となる。友人、家族、大切な人達とはもう会えなくなるんだ。好きにさせよう。それが私達の任務だ。」
傑がそう言うと、横で聞いていた黒井さんが口を開いた。
「理子様にご家族はおりません。幼い頃事故でご家族を亡くされました。それ以来私がお世話して参りました。ですからせめてご友人とは少しでもー」
「それじゃあアナタが家族だ。」
傑がそう返した。
お前はいいヤツだな、傑。
「監視に出してる呪霊は?」
「冥さんみたいに視覚共有できればいいんだけどね。それでも異常があればすぐに…って、二体祓われてる。正体不明の奴が2人いる!」
俺と傑、黒井さんの3人で急いで天内を探す。
「この時間は音楽室か礼拝堂です。」
黒井さんが言った。
「じゃあ、悟は礼拝堂。黒井さんは音楽室。私は正体不明2人を。」
そこで傑と別れる。
しばらく走って黒井さんは音楽室へ向かった。
俺は礼拝堂へ。
ドアを思いっきり開け、
「天内!」
大声で叫んだ。
すると、場が騒然とする。
「天内の彼氏!?イケメン!」
女子生徒達が騒ぐ。
「静粛に!」
先生が怒りながら、俺に電話番号を書いた紙を渡してきた。
俺ってモテるんだよね。
それなのに、好きな女は振り向いてくれない。