第8章 焦る
そう言うと男はニヤリと笑った。
「悟!」
その時、夏油が呪霊を出して後ろから男に体当たりさせた。
その反動で私は宙へと舞った。
「恋、大丈夫?」
夏油が私を受け止めてくれた。
「大丈夫、ありがと。」
夏油の出した呪霊は男を飲み込んだ。
2人で五条の方へと走りよる。
「問題ない。術式は間に合わなかったけど内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった。ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんだよ。天内優先、アイツの相手は俺がする。傑達は先に天元様の所へ行ってくれ。恋、お前は夜蛾のところへ行け!」
「五条!でもっ!」
五条の側に居たかった。
「悟、油断するなよ。恋、君は先生に知らせに行って。」
「わかった。五条死なないでね。」
「死なねーよ。俺強いから。」
私は先生を探しに行った。
夏油は黒井さんと理子ちゃんを連れて私とは反対方向へ行った。
しばらく走って中庭に到達した時だった。
「ここに居たか。」
「えっ?うそ。」
私の前にあの男が現れた。
「五条は?」
「死んだ。」
「うそ。」
「うそじゃねぇよ。見てみるか?死んでるから。」
「どこにいるのっ!?」
「全く、本当に藍そっくりの性格だな。」
男は私を抱えて走り出した。
あっという間に元いた場所に戻った。
「五条!」
血溜まりの中に五条が倒れていた。
「死なないって言ったじゃん。起きてよ。」
血塗れの五条の体を揺する。
「いやぁっ!五条のバカァ!」
反応の無い五条の体を揺すり続けた。
「な?だから言っただろ。さて、俺はちょっと用事があるんだよ。お前、俺と一緒に来い。悪いようにはしないしねぇーからさ。」
「ハァ?あんたバカなの?さっすが、バカ女が付き合ってた男ね。」
「気の強い女は嫌いじゃねぇ。ヨイショっと。」
「ちょっと!何するのよ?離して。」
男は再び私を抱き上げて肩に担いだ。
「お前、血だらけじゃない?きったねーな。」
私の体には五条の血がついていた。
「だったら、降ろして!」
「仕方ない、ちょっと黙ってろ!」
そう言うと男は私を降ろして腹にパンチした。
「ウッ」
目の前が暗くなった。