第8章 焦る
「へえ?五条もいいとこあるじゃん。」
五条と理子ちゃんを見る。
すごく楽しそうに遊んでいる。
これ見たら建人キレるだろうなぁ。
「ところで夏油。私は何故呼ばれたの?」
「あぁ、それは私ではないよ。悟がね、君を呼べってうるさくって。」
「ハァ?何で?」
「さーとーるー、恋がきたよー!」
夏油が大きな声で五条を呼んだ。
「恋!こっち来てー!」
「呼んでるよ?」
夏油が言う。
「聞こえてるわよ。恥ずかしい。ちょっと夏油、コレ持ってて。落として砂まみれにしたら殴るから。あ、あとこれもお願い。」
靴と靴下を脱ぎ夏油に渡して、その上に手袋を乗せた。
そしてズボンの裾を膝までたくし上げると、五条の元へ歩いて行く。
ゆっくりと。
わざと、ゆっくり。
「冷たっ!」
足を海につけた。
「やっと来たな。紹介するよ、理子。コイツは恋、俺の女。」
「へぇ?彼女いたのか?」
理子ちゃんがびっくりしている。
「違うの。五条の女じゃない。コイツの言うことは無視して。教育上悪いから。」
海水を両手ですくって五条にかけた。
「ひっどぉい!恋ちゃん。」
むくれる五条。
「誰がひどいのよ?何だか私、頭痛くなってきた。」
「大丈夫?恋ちゃん。」
五条が私のおでこに自分のおでこを当ててきた。
「ちょっと、やめてよ。子供の前で。」
「妾は喉が渇いたから黒井たちと飲み物を買ってくる。」
理子ちゃんは夏油の方へ走って行ってしまった。
「あーあ、行っちゃった。もう、五条のせいじゃない。」
「やーっと口聞いてくれた。」
ニヤニヤする五条。
「な、何なのよ。」
「寂しかったよ。お前が一週間も無視するから。」
「だって……建人にバレたし。」
「そんな事だろうと思ったよ。それで?七海とはどうなった?」
「別にどうもなってない。とりあえず、きょ、りおこうって…言わ、れて。」
何だか急に悲しくなった。
「あーっ、もう泣くなよぉ。俺が泣かせた見たいじゃん」
「あんたの、ック、せいでしょ?ウウッ。」
涙が止まらない。
「ごめん。」
そして半裸の五条に抱きしめられた。
「五条のバカ…大っ嫌い。」
「いいよ、嫌いでも。可愛いなぁ、恋ちゃんは。」