第8章 焦る
「泣かせるつもりじゃ…すみません」
優しく抱きしめてくれる建人。
何でこんなに優しいの?
「ごめんね。建人。」
「いいんです。しばらく距離を置きましょう。あなたの気持ちがハッキリするまで。」
「け、んと…」
「じゃあ、また。」
私から離れ、彼は帰って行った。
1人になった部屋で泣き崩れた。
私は本当にバカな女です。
それから一週間、五条を無視した。
とにかく、無視しまくった。
メールも電話も無視し続けた。
そんなある日、教室で先生を待っていると五条と夏油が喧嘩を始めた。
「弱い奴らに気を使うのは疲れるよホント。」
五条が不遜な態度をとると、
「呪術は非術師を守るためにある。」
夏油がたしなめる。
「ポジョントークで気持ちよくなってんじゃねよ。オッエー。」
五条が更に夏油を煽った。
空気が凍りついたのを感じた。
「外で話そうか?悟。」
硝子が椅子から立ち上がり、私に目配せする。
「寂しんぼか?一人で行けよ。」
私と硝子は急いで外へ逃げた。
男二人が戦闘モードに入ったから。
「ハァ、ハァ。びっくりした。」
「うん。下手すりゃ巻き込まれてたかも。」
「恋、最近五条の事無視してるでしょ?それでアイツ機嫌悪いんだよ。」
「そんなぁ。私のせい?」
「うん。あんたのせい。で?七海とはあれからどうなったの?まだ距離置いたまま?」
「うん。あれから全然話してない。」
「あんたの気持ち待ちなんでしょ?どうなの?」
「うーんそれがさぁ、どうしたもんかねぇって感じだよ。」
「あんたは婆さんか?悩むって事は、五条の事が気になってるって事?」
「……うん、多分。」
「じゃあ、何でアイツの事避けてるの?」
「だって。五条見てたら止まんなくなりそうで。」
「何が?」
「体が求めるの。」
「フフッ。腰が抜けるくらいよかったんだもんね。」
「ハァ。何かこんな事言ってるとビッチみたいで嫌だな。」
「いいんじゃないの?体の相性って大切なんだし。」
「そうかなぁ?それにしてもいつまでも中途半端じゃ建人にわるいよね?そろそろハッキリしなきゃかなぁ。」