第8章 焦る
硝子の部屋でシャワーを浴びた。
五条の香りを消すために。
朝になり、自分の部屋へ帰った。
硝子の部屋で少し仮眠を取っただけなのに、全然眠くなかった。
味噌汁を作り、硝子に出来たよとメールした。
「いただきまーす。」
硝子と一緒に朝ごはんを食べる。
シャワーのお礼だ。
「やっぱ恋の味噌汁は最高!」
「喜んでもらえて良かった。」
「私が男ならあんたを離さないだろうね。例え、浮気しようが何しようが。」
「硝子…」
「冗談よ。さあ、早く食べよ。遅刻したら夜蛾に怒られる。」
「りょーかい。」
朝ごはんを食べ終え部屋を出てロビーへ行くと、
私の心を惑わせる声が聞こえた。
「おっはよー!」
声の主は五条悟。
今1番会いたくない男。
「硝子、ごめん。先行くね。」
急いでその場から立ち去る。
とにかく今は五条に会いたくない。
寮を出たところで建人に会った。
「おはよう、恋。」
「おはよう、建人。」
建人の顔がまともにら見られない。
「シャンプー変えました?」
す、鋭い。
「昨夜、硝子のところに泊まったから。」
それは本当の事。
「そうですか。わかりました。今夜、部屋に行ってもいいですか?」
「う、うん。いいよ。」
その日は一日中五条を避けた。
夜になり、建人が部屋にやってきた。
「いい匂いですね。クリームシチューですか?」
「うん。好きでしょ?」
「ええ。」
夕食後、お皿を洗っていると後ろから建人に抱きつかれた。
「シャワー浴びたんですね。いつもの匂いだ。」
「け、んと。」
首筋に吸いつかれる。
「やはりシチューは罪滅ぼしですか?」
「どういう意味?」
「五条さんと何かありましたね。」
「……」
私は何も言えなかった。
建人は私を抱きしめたまま話を続ける。
「私が乱暴に抱いたからですか?それで、嫌になった?」
「違う。建人は悪くないの。わ、たし、が…悪いの。」
「五条さんが好きですか?」
「…わかん、ない。…わ、かんないの。」
溢れる涙。
ただ、泣くことしか出来なかった。