第8章 焦る
まさか腰が抜けちゃうなんて。
とにかく気持ちよかった。
体の相性がいいってこういう事なのかな。
五条の入れてくれたコーヒーを飲みながらそんな事を考えていたら、突然恥ずかしさと後悔の気持ちが込み上げて来た。
五条の顔をまともに見る事が出来ず、時間を聞いた。
「夜中の2時だよ。」
「そろそろ帰るね。コーヒーごちそうさま。」
「そっけないなぁ。」
怒るのも当然だと思った。
こんな態度を取った私が悪い。
「ごめん。」
「謝るなよ。」
以前にも同じような事があった。
あの時私は五条の立場だったけど。
少し思い出して悲しくなった。
悟られたくなくてサッと外へ出た。
私はバカでしたたかな女です。
私の部屋の前に硝子がいた。
「硝子、どうしたの?具合悪いの?」
ドアの前で座り込む彼女に聞いた。
「もう大丈夫。それより、これは夏油の策略よ。」
「え?どう言うこと?」
「夏油が私に強い酒ガンガン進めてきてたのは、五条と恋を2人っきりにするためだったらしい。あいつ、酔っ払った私を介抱するとか言って…結局、あの後担がれて保健室に連れてかれた。」
硝子の言葉に耳を疑う。
「うそでしょ?何で夏油はそんなことしたの?」
「五条の為だって言ってた。てゆうか、五条はいきなり押し倒したわけ?」
「ちょっと、硝子何言ってんの!?」
「したんでしょ?五条と同じシャンプーの匂いプンプンさせて、バレバレ。」
「う、うん。押し倒されたというか、流されたというか。」
「流れでヤッちゃったわけか。アイツ…やっぱクズだ。」
「私だってクズだよ。こんな事して。」
「七海の事気にしてんの?」
「うん。私、建人の事裏切ったから。」
「五条の事好きなの?」
「わかんない。好きなのか何なのか。」
「自分の気持ちがハッキリしないうちにヤッちゃって、結局ただヤリたかっただけなのかも…みたいな?」
言いたかった事を硝子が言ってくれた。
「そんな感じ。」
「五条は良かった?」
「良すぎて腰抜けた。」
そう言うと硝子は笑った。
「アハハ、とりあえずその甘い匂いをどうにかしないと。ウチでシャワー浴びなさい。明日、七海に何か聞かれたらウチに泊まったって言えばいいから。」
「ありがと、硝子。」