第7章 ●ねだる●
「ふーっ、美味かった。」
帰り道、五条が両手を上げて背伸びをした。
「硝子、大丈夫?」
硝子は飲みすぎたようで足元がおぼつかない。
「あー、飲みすぎたぁ。」
私はフラつく硝子を必死で支えていた。
「恋、変わるよ。硝子、そこの公園で休んで行くか?」
夏油が私の代わりに硝子を支えてくれた。
「あー、悪いね。そうさせてもらおうかな。」
「悟、恋を頼んだよ。」
「おうっ、傑。任せとけ。」
「えっ?いいよ。私も硝子に付き合う。」
夏油と硝子について行こうとしたが、五条に止められた。
「どした?まだ帰りたくないんなら、散歩でもしよっか。」
無理矢理手を掴まれ、連れていかれる。
気づくと夏油と硝子の姿は消えていた。
「ねぇ、お前俺のこと避けてる?」
五条はいきなり立ち止まると、無理矢理繋いだ手に力を込めた。
「そんな、訳じゃないけど。」
公園の街灯に照らされた彼の白い髪の毛はとても綺麗だった。
「じゃあ、どういう訳なの?」
にじり寄る五条。
「だ、だって…いきなり、するんだもん。」
「じゃあ、断り入れればいいの?…じゃあそうするよ。恋、キスするよ。」
そう言うや否や、唇を奪われた。
「ンッ、ちょっと、ヤダァ。」
五条の胸を思いっきり押した。
「ヤダァって。煽るんじゃないよ。」
五条はそう言うと舌なめずりをした。
「何で…?…こんな、事するの?」
涙が溢れてきた。
「ごめん。」
一言そう言うと、五条は私を抱きしめた。
大きな彼に包まれる。
背中に回された手がだんだん熱を帯びてくる。
私が押し返したり出来ないよう、ギュッと強く抱きしめられる。
もう、ここから出られなくなりそう。
このまま閉じ込められてしまいそう。
「ごめん、本当に。泣かせるつもりじゃなかったんだよ。」
そう言うと私の頭にキスをした。
そして力が少し緩められた。
頭を起こして彼の顔を見上げる。
この時、理性がどこかへいった。
目の前の男を欲しいと思った。
「五条」
名前を呼んだ。
「恋」
今度は思いっきり背伸びをして私から触れるだけのキスをした。
すると彼は私を抱き上げ、近くにあるベンチへと下ろした。