第6章 ●訝る(七海の場合)●
恋が東京に来てから1ヶ月と少し経った。
彼女は私より一学年上だ。
2年生の仲間達と上手くやっているようだった。
だが、一つだけ気になることがある。
それは、五条さんだ。
彼女が五条さんを見る目。
他の人を見ている時と違う気がする。
私の考えすぎでしょうか。
でも、五条さん……あの人は厄介だ。
五条さんと恋、2人きりでの任務。
とても心配した。
補助監督から、恋が怪我をしたという知らせがあった。
たまらずに外へ飛び出した。
しばらくして2人を乗せた車が帰ってくるのが見え、走り寄った。
何故か急いで車から降りる五条さん。
どこかへ走って行ってしまった。
「恋、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、建人。大した怪我じゃないし。呪霊は五条が祓ってくれたしね。」
「いえ、呪霊ではなくて、五条さんですよ。2人っきりで何もされませんでしたか?」
すると一瞬、彼女の顔がこわばった。
やはり何かあったんですか?
「何もされてないわよ。何言ってんの?」
動揺が顔に現れていますよ。
彼女を抱き上げ、硝子さんに治療を頼む。
自分がこんなにも嫉妬するなんて思っていなかった。
これでは先が思いやられる。
治療が終わったと硝子さんから連絡を受け、再び急いで恋の元へ向かった。
私が心配性という事で、夏油さんにからかわれた。
灰原にいたっては間の悪い時に現れる始末。
恋と五条さんの2人で先生に報告に行った。
報告に行くというだけなのに心配でならない。
イライラしながら待っていたのに。
何故かスキップしながら戻ってきた五条さん。
嫌な予感がしたんです。
「今から恋がマフィン作ってくれるんだけど、俺作るところ見たいから見ててもいい?」
ウキウキした様子の五条さん。
「何故見たいんです。」
「焼ける匂いとか嗅ぎたいんだよ。なっ、いいだろ?七海。」
「わかりました。見るだけなら。」
結局、五条さんには敵わない。