第38章 ●縛る●
「真田さんは何の仕事してるの?」
恋が聞いた。
「僕は普通のサラリーマンだよ。」
「証券マンなんだ。」
硝子が付け足す。
「カッコいいね、悟。証券マンだって。建人と同じだね。」
何処がカッコいいんだよ。
最強術師の方がよっぽどカッコいいだろ。
てか、七海もカッコいいって事なの?
「大した事ないよ。上司に叱られて顧客に頭下げて部下には気を使って、しがない中間管理職だよ。知り合いに僕と同じ業種の人がいるの?」
「七海の事だよ。」
硝子が言った。
「ああ、七海くんね。よく話は聞いてるよ。恋ちゃんは下の名前で呼ぶんだね。」
「建人とは幼馴染だからね。」
「それプラス元カレだよね。」
硝子、それを言うな。
これ以上七海の話は聞きたくない。
「うわぁ!?ほれおいひい!!」
突然、大声を出した恋を見ると芋の煮物を口一杯に頬張っている。
まったく、可愛いんだから。
結局真田の仕事の話はどっかへ行った。
「恋ちゃんって本当、美味しそうに食べるね。」
真田が褒める。
コイツ、めげないな。
「だって美味しいんだもん。」
「可愛いね。」
コイツ、自分の女がいる前でよく他の女褒められるな。
硝子の事遊びじゃないだろうな。
「ありがと。真田さん。」
酔ってきたせいか照れもなくなり素直に返事をする恋。
「真田さん、硝子は可愛くないのか?」
たまらず聞いてみた。
「可愛いよ。」
迷いなく応える真田。
「ハハッ、ありがと。」
照れる硝子。
僕の考えすぎ……かな。
「あれ?悟、食べてる?」
恋が僕の方を見る。
「え?あ、ああ、食べてるよ。」
右手でお前の左手掴んでるから食えないんだけどね。
「もう、全然食べてないじゃん……ほら、あーん。」