第38章 ●縛る●
テーブルの下で恋の左手を握った。
小さくて可愛らしい手を。
「……バカ……」
僕の方を向き、小さく呟いた恋。
握った手はそのままで。
「それにしても同じ職場っていいね。羨ましいよ。」
何が羨ましいんだ。
硝子と同じ職場だから?
それとも恋と同じ職場だからか?
「悟には夢があってね。私はその手助けがしたくて同じ場所に立ってるの。」
そう言って僕の手をギュッと握る恋。
お前ってヤツは………
すぐにでも抱きしめてやりたい。
嬉しすぎて涙が出そうになるよ。
真田に妬いてる自分が恥ずかしい。
「可愛い恋ちゃんからそんなに思われて五条くんは幸せだね。」
そうだ、僕は幸せ者だ。
「ああ、そうだよ。真田さんだって硝子に思われてるだろ?」
「そうだけどね。」
何だよ、けどって。
「硝子、良かったね。素敵な彼氏で。」
「ありがと、恋も良かったね。クズとより戻せて。」
「うん。ありがと。」
「おい、硝子。クズはないだろ。それに恋も否定しろよな。」
「アハハ、クズが怒ってるよ、アハハハ。」
「フフフ、本当だ。」
爆笑する硝子に釣られて笑う恋。
「君たち3人は本当に仲がいいんだね。なんだか妬けるよ。」
真田が言った。
「私たちは学生の頃からの付き合いだからね。妬かないで、慎ちゃん。」
硝子が真田に微笑みかける。
コイツのこんな姿初めて見たな。
「慎ちゃんって呼んでるんだ。いいね。」
羨ましそうな恋。
「まあね。」
僕だってたまに恋ちゃんって呼んでるじゃん。
恋も最近は僕の事悟くんって呼ぶ時あるしね。