第35章 ●嬲る(夢主の場合)●
「終わりました。しかし、私の能力では出血を止め、脱臼を元に戻すのが精一杯。骨折までは治せません。」
「これで十分さ。どうもありがとう、君は外へ。」
「御意。」
呪詛師は外へ出た。
「疲れただろう、ゆっくりすれば良い。」
再びソファに腰掛けた私の隣に夏油が座る。
「アンタにされた事せっかく忘れてたのに、何で今頃現れるの?」
昔のことを思い出し、涙が溢れた。
「泣かないで、恋。」
私の頭を撫でる夏油。
「触んないでよぉ。」
「よしよし、可愛いね。」
私、何で自分を傷つけた男に慰められてるんだろう?
「夏油のバカ……」
コイツにされた事は許せないけど、友達として過ごした時間は何ものにも変えられない。
だから悟に言った。
私は大丈夫だと。
悟に親友と争って欲しくなかったから。
硝子や、建人だって夏油の話はしない。
きっと辛いからだ。
それなのにコイツは………
「大丈夫かい?」
心配そうに私の顔を覗き込む夏油。
「悟のところに帰りたい。」
「ああ、その顔。君が悟に会いたいと恋願う顔、好きだよ。」
「何で今ごろ?ずっとおとなしかったのに。」
「天災は忘れた頃にやってくるって言うだろ?」
「わけわかんない事ばっか言わないで。」
「君が恋しくなっただけだよ。」
「乱暴な事しないで。」
今日乱暴したのは私なんだけど。
「しないよ、私も大人になったんだ。私はただ、君が欲しいだけさ。悟に愛されてる君が。だけど、力ずくで組み敷いてもダメだとわかったんだよ。君にも七海と同じ選択をしてもらう。」
「言う事聞かないと非術師を殺す?」
「そうだよ。それに、二度と悟に会えなくなるよ。」
「何すればいいの?」
わかってるけど聞いてみた。
「君は物分かりのいい子だね。そう言うところも好きだよ。寝室へ案内しよう、私は君が欲しい。」
言われた通りにするしかなかった。