第35章 ●嬲る(夢主の場合)●
髪の毛を下ろし、僧侶の袈裟を身につけている夏油。
「君は変わらないね。」
「アンタは変わりすぎだね、どうしたの?ロン毛坊主?」
「ここじゃゆっくり出来ないね。おいで、静かなところへ連れて行く。」
そして私は夏油に殴られ、気絶した。
「やあ、お目覚めかな。」
「ここ、どこ?」
気づくと見知らぬ家の中にいた。
リビングのような部屋でソファに寝かされているようだ。
「ここはね、涼子が昔家族で夏を過ごした家なんだよ。」
体を起こし部屋を見渡す。
窓の外には山が見えた。
高山が夏を過ごしたということはどこかの別荘地だろうか。
それにしてもとにかく寒い。
山には雪が積もっているようだ。
「寒い……」
ダウンジャケットを着ていたが、討伐の前に脱いで車に置いて来た事を思い出した。
「すまないね。暖房の効きが悪いようだ。さっき温度を上げたからもうすぐ暖かくなるよ。」
後ろに夏油が立っていた。
「目的は?」
「良かったね。悟とよりが戻せて。私が人肌脱いだんだよ。」
質問には答えず勝手に話す夏油。
「どう言う意味?」
「七海に言ったんだ。恋と悟がよりを戻さないと街に呪霊と呪詛師を放つってね。七海は名演技だったよ。シナリオは私が書いたんだ。」
「なにそれ?」
「要するに七海と涼子のキスシーンは演技だったんだよ。君が七海と別れて悟のところへ行くよう仕向けたんだ。」
「なんでそんな事したの?」
「私はね、悟に愛されてる君が好きなんだよ。そうだ、それと君の身内の和くんだけど、彼が戻ったのも私が仕向けた事だよ。」
「和くんも?」
「最近、龍家に仕えていた術師が仲間になってね。君の事を色々教えてもらったよ。それで和くんならきっと恋を自由にしてくれるだろうと思ったんだ。」
「和くんに何したの?」