第35章 ●嬲る(夢主の場合)●
翌日は朝から討伐任務。
補助監督は高山涼子。
「恋さん、五条さんとより戻されたんですね?」
行きの車の中で高山に聞かれた。
「うん、建人に聞いたの?」
生徒たちに揶揄われるのが嫌で、悟には口止めしている。
知っているのは硝子、伊地知、建人だけ。
「お二人を見ていてわかったので彼に確かめました。」
この時は勘の鋭い子だなあと思った。
「建人とは上手くいってる?」
「はい、順調です。」
「そう、良かった。」
昨日見た2人の姿が気になっていたけど、この時それは杞憂に過ぎないと思った。
途中、元教え子の猪野を拾った。
「おつかれ、任務終わりでまたすぐ任務なんて大変ね。」
「自分から言ったんだよ。とにかく任務ぶっ込んでくれって。」
「どうしたの?なんかあった?」
窓の外を見てる猪野。
遠い目をしてる。
「フラれた。」
ボソッと言った。
「フラれたってあの子に?えっと、ななちゃんだっけ?あの可愛い子。」
「そうだよ。俺が他の人を見てるから付き合えないって言われた。」
「他の人ってアンタ、他に女がいるの?」
「違うよ……ずっと片想いしてただけ。」
「へえ、アンタがねえ。」
そんな事は初耳だった。
「だから仕事しまくってんだよ。色々忘れたくて。」
「そっか、元気出してね。今度アンタの好きなプリン沢山作ってあげるから。」
「本当!」
「うん。」
私の方を向き、嬉しそうは表情を見せる猪野。
この子は私の教え子の中で1番問題児で1番可愛い。
「恋ちゃん、七海さんと別れたんだろ?五条さんとはより戻さないの?」
この子は私をちゃん付けで呼ぶ。
「もう戻ったよ。」
嘘つくわけにもいかないから。
「そ、うなんだ……」
猪野はそう言うとまた窓の外へ目をやった。