第35章 ●嬲る(夢主の場合)●
「恋、恋。」
「ウ……ン……しゃとる?呼んだ?」
気づくと目の前に優しそうに微笑む悟の顔があった。
「お帰り。」
軽いキス。
「私……また気絶してた?」
「うん。七海の時も?」
「気絶はしてないよ。こんなの悟だけ。」
「嬉しい。」
優しく抱きしめてくれた。
「私も嬉しい。」
心からそう思う。
心から。
「体操服姿よかったよ。めちゃくちゃ興奮した。」
「悟にあんな趣味があったなんて知らなかった。ロリコンだったなんて。」
「違うよ。恋ちゃんだけだからね。」
「他の女ならまだしも他所の子供に手を出してたら、アンタを道連れにして死ぬから。」
「子供には出してないよ。信じてよ。そんな真顔で死ぬって言うなよ。」
悟がまた泣きそうになってる。
「泣いちゃう?悟おにーさん。」
「いじわるだね、ちっちゃい恋ちゃんは。」
「こんな私は嫌い?」
「ううん、好き。」
「私もだいしゅき。チューして、悟お兄さん。」
「それ、気に入ってるだろ?」
「はやくぅ。」
「はいはい、わがままな恋も大好きだよ。」
悟の柔らかい唇が私の唇に触れる。
これからの事はゆっくり考えよう。
悟と一緒に。
とても満ち足りた気持ち。
だけど、この蜜月は長くは続かなかった。
悟と寄りを戻してから一週間後の昼休み、硝子と一緒に高専近くの店でランチをしていると、店内に建人と高山の姿を見つけた。
「結局落ち着くところに落ち着いたって感じ?」
硝子が言った。
「そうかもね。」
「それにしてもあの2人、まるでお通夜だね。」
硝子の言う通り、建人と高山の2人は黙々と食事するだけで会話をしている様子も、お互いを見つめ合ってる様子もない。
「まあ、2人とも大人しいから……それにしても本当お通夜だね、あれじゃあ。」