第4章 ●気になる●
車の後部座席に乗せられドアを閉められる。
五条は助手席に乗った。
帰り道、彼はひと言も話さなかった。
あ、煽る?
私は五条の心意を計りかねていた。
高専に着くなり、五条は運転してくれた補助監督さんにも何も言わず、さっさとどこかへ行ってしまった。
補助監督さんの助けで車を降りると、建人が心配そうに走り寄ってきた。
「恋、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、建人。大した怪我じゃないし。呪霊は五条が祓ってくれたし」
「いえ、呪霊ではなくて、五条さんですよ。2人っきりで何もされませんでしたか?」
一瞬、ドキッとした。
「何もされないわよ。何言ってんの?」
建人は真っ直ぐにこちらを見ている。
その時、硝子が走ってくるのが見えた。
「硝子さん、治療お願いします。」
そう言うと建人は私を抱き上げた。
今日は2人の男に抱き上げられた。
「はい、これでよしっと。治ったよ。コーヒーでも飲もう。」
治療が終わり、2人でコーヒーを飲む。
「治療ありがと、硝子。」
「さて、ところで五条と何かあった?」
一瞬、コーヒーを吹き出しそうになる。
「ウッ。ちょっと、いきなり何よ。」
「さっき五条が消えてたからさ。ちょっと気になってね。補助監督に聞いたら黙ってどっか行ったっていうし。だから何かあったのかなーって。」
「さあ?別に何もないけど、どうしちゃったんだろ。」
何かあったと言えばあったけど、それと五条が黙ってどこかへ行った事とは結びつかなかった。