第34章 嬲る
猪野くんの話はこうだ。
洞窟内の呪霊討伐に行ったら洞窟の一番奥に1級呪霊がいた。
しかし、それは罠で2人が呪霊を倒している間、背後では呪詛師二名と高山がやってきて退路を塞ぎ、猪野くんが捕まってしまった。
高山が恋に向かって猪野くんを殺されたくなければ一緒に来いと言い、恋はそれを了承した。
「高山が五条さんに後で高専に連絡すると伝えろと言ったんです。それと、恋ちゃんが私は壊れないから五条さんに泣くなって伝えてくれって言ってました。」
「さすが僕の恋ちゃん!」
から元気を出す五条さん。
側から見ていて痛々しい。
やはり、これはあの人が関わっているに違いない。
私は意を決し、夏油が高山を使い私をはめた事を話した。
「五条さん、すみません。あなたに伝えておけば何か違ったかもしれません。」
「お前、何で僕に言わなかった?」
五条さんは怒りに任せ、学長室の壁を殴った。
「悟、止めろ!」
学長が諌める。
「何でだよっ!」
暴れる五条さん。
「悟、お前が事前に知っていたらもっと大惨事になっていたかもしれない。一般人に被害が出なかった事は不幸中の幸いだ。」
「恋が犠牲になって良かったって言うのか?」
学長に食ってかかる五条さん。
「そうじゃないっ!俺だって辛い……教え子達が酷い目に合わされて……しかも、犯人もまた教え子かもしれないんだからな。」
「ああ、そうだ。僕の親友に違いない。恋を酷い目に合わせるのはこれで二度目だ。傑にいいようにされるのは……」
「五条、落ち着いて。恋は強いよ。」
宥める家入さん。
「そう……だよな、硝子。アイツ、強いよな?」
「うん。本当にあの子は強い子だよ。」
私も思う。
恋は強い。