第34章 嬲る
夏油さんが恋に惚れていたのは知っていた。
しかし、それは五条さんが恋を愛している事が条件だったとは。
『君が言う事を聞いてくれないと高専の周りの街が消滅する事になるよ。』
夏油さんはそう言って薄らと笑みを浮かべた。
『詳しい事はそこにいる涼子に聞いてくれ。あ、涼子の両親はとっくに亡くなっているよ。では、よろしく。』
そこで動画は終了した。
「どういう事です?」
涼子を睨む。
「私は夏油様の物です。」
「ご両親は?」
「死んだのでウチの別荘の庭に埋めました。」
「誰が殺したんです?」
「私と仲間です。」
「なんて事を………」
「言う通りにしなければ夏油様の命令が発動します。高専の周囲に大量の呪霊と呪詛師を放ち、非術師を片っ端から殺します。あなたのせいで、そうなります。」
「そんな事、絶対にさせません。」
「では、恋さんと別れる方法を説明します。これを実行し、尚且つ恋さんと五条さんがよりを戻せば発動は中止されます。」
そして、私は恋と別れた。
信じ込ませるよう、涼子と好き合っている演技をした。
結果は上手くいった。
その後五条さんに恋の事を頼んだ。
あの人の事だ、私が頼まなくてもそうしただろう。
しかし、まさか和之進さんが帰ってきているとは。
偶然だった。
そのおかげで五条さんと復縁した恋。
恋が幸せそうなのがせめてもの救いだった。
「約束通り、例の件は早急に中止してもらう。それからこの件は私だけに留めておいてもらいたい。」